近所のお弁当屋さん。
特に人気店というわけでもなさそうなお店ですが、先日、私が二人目に並んだ直後、薄いピンク色の制服にお揃いの紺色カーディガンを羽織った看護師さんたちが、パタパタと足音高く駆けてきて、4人も後ろに続きました。
近くに病院、あったかなとぼんやり考えている背中に、滑舌の良い若々しい声が聞こえてきます。全員マスクをしていますが、とてもはっきりした声でした。
「だめよ、そこまでいくと」
「そうよね、女子力高すぎると男にとって高根の花になっちゃうんだって」
「そっかあ、そこまでお金かけることないかあ」
背中で聞いていることと、通りに面したお弁当屋さんですので車の騒音だとかで、聞き取れない部分もありましたが、
「え、でもマリさん、ちゃんとゲットしたじゃん」
「あれはねえ、また別の女子力なのよ」
「なあに、それ」
と、ここで
「はい、のり弁お待たせしましたア」
ということで、その続きを聞くことはできなかったのですが、ん~、女子力って、よく聞くけど、なんなの?
と道々首をひねりながら帰ったのでした。
しかも、別の女子力、とか、謎だ。
思い返してみると、居酒屋のカウンターで隣り合わせたサラリーマン二人がしていた会話を思い出しました。
「いやあ、健太郎はああ見えて、結構女子力高いタイプなんだよ」
「そうだよな、アイツ。気持ち悪いよ」
「いやいやいや、女子力高い奴ってモテるんだぜえ」
え、女子力って男に対しても使うの?
なんなんだろう、女子力。
女子の腕力自慢ではないですよね。
別の日、その話題を呑み仲間に振ってみると「男をころがす力、女の魅力、その演出」
というやけにキッパリとした答えが返ってきました。ひょえ~、であります。
そんなことを言っている人がいた、ということらしいのですが、凄いね。その意見に根拠を感じないけれど、うなづけます。
ターゲットの男に対して自分を魅力的に見せるセルフプロデュース力、ってことなんでしょうかね。無理矢理納得。
でも、どうでしょうかね。男はこういう女が好きでしょ、という女の判断はどこに根拠を置いているのでしょうか。
男はバカだからみんな一緒よ、というご意見に、ムキになって反論しようとは思いませんが、男も千差万別です。
メディアに毒されている男ばっかりではないのでありますよね。
女子も女子として、ごく自然に振る舞えば、そのまま魅力が伝わるんじゃないの。
というのが無理な注文らしいことに、多くの男子も気付いているのであります。
どうしても自分を飾りたくなりますよね、相手に対して構えるといいますか。
憎からず思う気持ちが、普段の自分から背伸びせずにはいられない女ごころ。女子の本能的行動。
ま、男も気付いているのですよ、たいていの場合はね。
付き合い始めの頃、その女子が独り暮らしだったりするときは、その部屋に入ると分かることがあります。
家族と一緒に実家暮らしであったとしても、自分の部屋を持っていれば同じように、感じ取れるものがあるのです。
その女子が今ここにあるために、これまでどんな風に生きてきたのか。暮らしてきたのか。どんな嗜好なのか。
例えば、食の嗜好。
同じラーメンを食べて同じように旨い、と感じる人か、同じハンバーグを食べて同じようにイマイチと判断する人か。
つまりお互いに根本のところで無理なくやっていけそうな人かどうか、感じるのです。
これは旨い、という嗜好が似ていれば、その他のジャンルの好みが違っていても和気あいあいで一緒に居られます。よね。
ケンカしていても、同じ店に同行できそうです。道々言い争いながらだとしても。
旨いものを一緒に食べながらのケンカは、たいして深刻にならないのではないでしょうか。
部屋の中の何をもって、そんなことを感じ取るのか。
独り暮らしを始めると、女子は特にそうだと思のですが、自分の好きな家具、装飾品、小物を揃えがちです。
そこに個性といいますか、その人のカラーがありますよね。
単にモノの色合いということではなく、その人らしさがあるということです。
その空間から毎日職場へ通っている独り暮らしの部屋。楽しいことばかりではない日常の中で、疲れて帰ってきて、ふっと息の抜ける、安心できる自分だけのスペース。
そこにはどうしようもなく、その人の空気があります。それを感じるのだと思います。
もちろん、全ての男が、ではないでしょうけれどね。逆もまた然り。
お茶とか、コーヒーを淹れてくれたとき、カップが来客用に揃えてあったりすると、まあ、引きますね。独り暮らしなのに、と。
わざとだとすると、けっこうメンドイ人。
何が正解とかではなく、世界の中からその人が選択したそのものに、共感できるかどうかなんだろうと思います。
棚に置かれた小物たち。
現実世界をありのままに見ることのできる女という生き物の感性には、男の理解の及ばないセンスが確実に存在しています。
「これ、なんなの?」
「それはねえ……」
という会話が自然に成立すれば、男にはその女の「女子力」が浸透しているのだと思います。
単純明快でイイのではないでしょうか。
気取らすに、一緒に飲食できて、疲れない。そういう男と女の関係性。
個人的には「食」が一番重要と考えているのですが、おそらく衣食住において、自然な空気感でカップルの生活をコントロールしている、他人と一緒に生きていく力。
そういうのが女子力の正体、なのではないかと。。。
ネールアートへのこだわりだとか、なかなか理解できない、男には浸透してこないセンスというのもあるにはあるんですけれどね。
「食」の周辺に共通するもの、好きじゃないけれど許容できるものがあれば、女子力をうまく活かして、男は、その女子力にゆるく包まれながら、上手に暮らしていければ、まあ、良しとすべき人生なんだろうな、と。
笑顔の種類、これまた代表的な女子力、ですかねえ。
自分らしく、とはよく聞かれる言葉です。メディアでは何かといえば、自分らしく、あなたらしく、と言ってますね。
自分をつかむのってナカナカ難しいです。
あたしってこんな女だったんだ。
って強引に解ったつもりにならなくってイイんだと思います。自分ではね。
そうそう、よそから見た方が判断しやすいことってけっこうあります。
自分がどういう人間なのかを決めるのは他人、であったりするわけなんですね。
他人をコントロールしようとせず、そのままで、素直に生活する。
笑顔のバリエーション。それが、その人の女子力。