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妄想【TOKYOワルツ】古い歌を聞いて自分と向き合うノスタルジーの独り呑み

< 1984年 昭和59年 歌:由紀さおり 詞:なかにし礼 曲:宇崎竜童 >

「歌は世につれ 世は歌につれ」っていう言葉がありますけど、これをコトワザって言って説明しているのを見かけます。


ええ~!? そなの? ちゃうような気がしますねえ。


昭和の歌謡曲隆盛なりしころの歌番組で、司会者が定番の挨拶みたいに言っていたのが始まりだそうですよ。
ま、慣用句的には捉えられるかとは思いますけどね。
とっても優れたコピーですよね。


まさに俗な意味での「流行歌(はやりうた)」っていうのは、その時の世の中の写し鏡ってところがあって、そのタイミングでなければ生まれてこなかった歌であり、その歌が流れることによってその時のその街の空気感が作られていくパワーを持っているように感じます。


さらに言えば、その流行歌をオンタイムに聞いていなくとも、ふっと耳に入って来て、なんとなく聞いたことがあるような気がしてきて、ずず~っと曲の世界観に引き込まれちゃうってことがあります。


流行歌ですからね、街なかのどこかで流れていることって少なくないです。


ま、カウンターでの独り呑みの時とかですね。ウイスキーとか焼酎とか、蒸留酒の時なんかは聞こえてきた歌にも酔えるような気がします。


その歌によってその時期、その街の情景が思い浮かんだりすることもあります。
そういう意味では「東京」っていう街は、常に変化し続けていて、時間が違うと風景が違う確率の高い街ですね。

 

 

 


1984年の総理大臣は中曽根康弘。もう遠い昔になりました。


新語・流行語大賞」が始まったのがこの年。


第1回新語部門金賞は「オシンドローム
テレビドラマ「おしん」の大流行をシンドロームと合成した言葉が「タイム誌」に載って、広まったってことで金賞。金賞っていうんで始まったんですね。


流行語大賞は「〇金、〇ビ(まるきんまるび)」
「一億総中流」と言われた当時、同じ職業の中に存在する階層差、所得格差を戯画化した、渡辺和博の「金魂巻(キンコンカン)」が大ヒット。
その中で言われていた金持ち〇〇、ビンボー〇〇から。


どうもね、この「新語・流行語大賞」って、もう40年近い歴史を持っているんですが、例年、ん? って思っちゃう言葉が選ばれている印象があります。
審査、選出する人たちの仕事が偏っているんだろうなあって思います。


おしん」は今でも取り上げられることもあって、オンタイムじゃない世代にも知られているでしょうけれど、「金魂巻」の方はどうでしょう。


コアラとエリマキトカゲがブームになって、禁煙パイポ、カラムーチョが発売されたのが1984年です。
時の流れを感じますね。禁煙パイポ。ありましたアリマシタ。

 

 

 


さてさて妄想の始まりです。
この先は一杯ひっかけてから、読んで、つかあさい。っね。


妄想「TOKYOワルツ」


彼女が東京へやって来てから7回目の冬が来た。
故郷の友人たちは、東京は寒いでしょうと言うけれど、いつだって東京の方が温かいと彼女自身は感じていた。
何か具体的な理由があって東京へやってきたわけではなく、とにかく田舎から出てみたかった。
自分のいる町は世界から取り残されていて、自分の人生を謳歌できる可能性が無いような冷たいひっ迫感をいつも背中に感じながら生きてきたから。


大学進学を理由に町を出るのならば、行先は東京しかないと思っていたし、そのまま実行した。
勉強したい分野があったり、入りたい大学があったのではなく、東京の大学でありさえすれば良かった。
なんとなれば、東京の近県の大学へ入って、アパートを東京にするということでも充分目的は達成される。そんな想いだけで、やってきた。


東京のことなんてなんにも知らなかったし。


もう、田舎に戻るつもりはなかった。それは東京へ来る前から決めていたような気がしていた。
やさぐれたような、そんなささくれた気持からじゃ全然ない。


ちゃんと大学を卒業して、普通の会社に勤めて、しっかりした暮らしをしていこう。


もともと一人っ子だし、ずっと一人で過ごしていても孤独感におそわれたことなんてなかった。
結婚するならしてもいいし、一生しないでも、それはそれでオッケーだった。大丈夫なはず。


大学が紹介してくれたアパートから通った東京郊外の大学を、語るべきような何事もなく卒業して、そのまま中堅商社に無事入社。


23区内にマンションを探して、片道45分かけて通勤した。
JRと地下鉄の乗り継ぎ。地下鉄を2回乗り換えることが、なんとなく自分のステータスででもあるように感じていたのかもしれない。


仕事を面白いと思うこともあったけれど、そんなことより、今、自分が東京という街の中の一員として暮らしているんだという実感に満足感があった。


東京は独り暮らしの女を適度に放っておいてくれる街だ。


将来のこと。そんな永遠なんて考えられなかった。


実家の両親は東京暮らしに反対だったけれど、帰ろうなんて思いもよらない生活が続いていた。
会社のあるインテリジェントビルには他にも多くの会社が入っていて、入社してすぐ、3つ上のフロアに入っているシステム会社の男と知り合った。


高校も女子高、大学も女子大だったし、初めての異性だった。
本格的な化粧も覚え始めて、東京に馴染んでいく自分を愛おしんだ。
大人の自分もワルクない。


男との逢瀬。東京という街は様々なデートの場所を用意している。いつもの角を違う方向へ曲がれば、全く違う店が並び、見たことのない景色、出会ったことのないアミューズメントがあった。


男との付き合いには満足していた。それが男女間の愛なのかどうか、確信なんて持てなかったが身体の相性も悪くはないと感じて暮らした。生きていた。


お酒も呑めるようになった。


男はスコッチが好きで、いつもストレートかロックで吞んでいて、彼女にも勧めたけれど、彼女は甘いカクテルか梅酒を楽しんでいた。
いつまで経っても子どもだねと、男はからかったが、それもまた楽しい気がしていた。
子供のままでもいいと思っていたのかもしれない。


男が金のブレスレットをプレゼントしてくれた。
素直にうれしかったし、このまま結婚するんだろうという予感があった。


いつのまにかこの男のために可愛い女でいてあげようと思うようになっていた。

 

 

 


今年の夏、急に男と連絡が取れなくなって、秋になって男の友人から教えてもらった。
プロジェクトがフランスへ移行することになって、男はフランスへ行った。そこで同じ会社の女性と結婚するらしい。


なあんだ、そういうことか。ひとこと言ってくれれば良かったのに。
あたしのことなんか気にしないで。


木枯らしが吹くころには、彼女は独りで東京の街を歩けるようになったし、スコッチもロックで吞めるようになった。


少し辛い感じがしたけれども、その辛さが大人の女としての自分だと感じられた。
無機質な東京の夜が優しかった。そういう街なんだ、東京は。


スコッチの銘柄なんてどれでも良かったし、チェイサーの呑み方も我ながらサマになってきたような気もする。


いつもこれまで行ったことのない店のカウンターに座って、静かに吞んだ。


今夜の店では薄暗いボックス席に案内された。
まあ、そういう席もいいかな。独りだけど。
スローなジャズが重く、低く流れている。


テーブルに左手の肘をついたときに気が付いた金のブレスレット。
無意識に身に着けるようになっていた男からのアイテム。


華奢な金の鎖は簡単にひきちぎることが出来た。


3杯も呑めばほろほろとして来る。今夜のスコッチは52%のスピリット・オブ・フリーダム。


マンションへ帰る途中、地下鉄の乗り換え駅の2つ前で降りた。降りてみたい気分だった。
階段を上って知らない東京の街へ出てみると、やたらに赤系統のネオンやら赤ちょうちんが目立っている。


いつまで経ったって、東京の街なんて知らない所ばっかりだ。

 

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東京の夜。どこの街にも明るい店があって、カウンターやテーブル席に優しい静かな仲間同士の笑顔が並んでいるんだろう。


でも、独りだって、いいんだよね。


色とりどりのネオンの灯りの中へ歩いて行って、今夜はそのまま迷子になってしまおう。


酔ってなんかいない。
でも、なんだか目の奥が熱いから、ヒールを脱いで、素足で、冬のアスファルトを感じてみようか。


東京に浮かれてたわけじゃないし、別に負けたわけじゃないけれど。


♪愛しても愛しても


♪二度とあなたに逢えぬなら


♪女なんかやめたい


♪男が悪い 東京が悪い


♪負ける女が なお悪い


♪三拍子そろった東京ワルツ
♪三拍子そろった東京ワルツ


ワルツっていうのにもけっこういろんな種類があって、アップテンポな「ウィンナワルツ」っていうのが世界標準らしいんですが、日本では、スローなイメージです。
男と東京と女の三拍子。


別に東京じゃなくたってどこだって一緒でしょ、って気もしますが、東京の歌って意外に多いですよね。


オンタイムじゃなくたって、歌は世につれ、世は歌につれ。でした。イイ歌ですよ。「TOKYOワルツ」

 

< 妄想の東京 >

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