< 外来種を完全に駆除するっていうのは不可能でしょうし 在来種との共生って出来ないの? >
東京を流れる大河といえば多摩川が思い浮かびます。
山梨県の笠取山(かさとりやま)を源流として、東京の貯水池の1つ、奥多摩湖へ流れ込んで、ここの小河内ダムから下っていく流れが多摩川ですね。
青梅市から多摩丘陵、武蔵野台地を下って、調布市、大田区を流れて川崎市から東京湾へ注いでいる大河です。
時々、この多摩川の土手道を歩くこともありますが、サイクリングロードが整備されていて、散策する人も多いですし、釣り糸を垂れている人たちもたくさんいます。
ひと頃の多摩川を知っている世代からしますと、多摩川で釣りをしている人がいるっていうのは驚きに近いものを感じるんじゃないでしょうか。
スモッグ注意報なんていうのが時々出されていた1970年代からバブル景気の頃、多摩川ってかなり匂いのする汚れた川だったですよね。
オーバーな表現じゃなくって「下水」の流れだったですよね。
それが、カムバックサーモン運動だとか、アユの呼び戻しだとか、いろんな人がいろいろと努力をされて、サケの遡上っていうのはまだ聞きませんけれど、アユは戻ってきているらしいんですよね。
多摩川上流地域では2018年に「江戸前鮎を復活させる地域協議会」なんていうのを発足させて、着実に運動を進めているみたいです。
流れがキレイになって、普通に釣りが出来るほどに回復しているんですよね、今の多摩川はね。
人間、っていうか日本人もなかなかやるじゃんね、ってこととは関係なく、調布市に住む友人と人気のラーメン屋さん「江川亭」に行って来たんであります。
江川亭っていうのは家系(いえけい)っていうのとはチョット違って、シンプル系のラーメンなんですけど、なんか不思議にトッピングのモヤシが旨いんです。東京の多摩地域にしかないみたいですけど、4店舗だか5店舗あるみたいです。
その調布の江川亭の近くに「ホッピー」の工場があるよ、ってことでふらふらと見に行ってみました。
工場見学とか、そういうホンモノじゃなくって、ただ、通りすがって工場を見るだけ。
ほほう、「HOPPY」って書いてありますねえ、って小学生の遠足以下の感想しか持てなかったんですけど、ホッピーの工場は多摩川のすぐそばにあります。
足を延ばした勢いっていいますか、そのままの流れで多摩川に行ってみましょうってことで、土手を超えて川の流れの近くまで行ってみたんであります。
釣り竿が何本か立ててありまして、釣りをしているんですねえ、って思って近寄っていった、まさにその時、5人の釣り人がタモを持ち寄ったりなんかしてドヤドヤと大騒ぎ状態になりました。
なんだ? どした?
腿まである長靴、みたいなのを履いている人もいましたけど、普通の長靴が1人。あとの3人は普通の靴でしたけど、なんだかもう多摩川の中にすっかり入っちゃって、ずぶ濡れ状態ですよ。
「寄せてよせて」
「竿、ちゃんと立てて」
たまたま居合わせただけで、いつもの仲間って感じの5人じゃなかったですね。
川幅は相当なものでしたけど、浅いところまで獲物を釣り糸で引っ張って来ているんで、そんなに深さは無いんですけど、タモで押さえつけようとしているそのサカナ。ドェッカイです。多摩川の怪魚。
釣り人たちは、なんか意地みたいなものを感じさせる勢いで、1匹のサカナを3個のタモと素手で引き上げました。
「コイ?」
「いや、こりゃソウギョだ。2メートルありそうだ」
「すごいチカラだな。オオモノだよ」
岸にあげて計ってみたら、っていうか、釣り人っていろんな道具を持ち歩いているんですね。ちゃんとスケールを持っていたんでありますけど、1メートル62センチでした。
スケールが必要になるようなオオモノがけっこうかかるんでしょうかね。
ソウギョ! 聞いたことがあるような、しかしまあ、こんなデッカイのが多摩川にいるんですねえ。
聞いたらですね、近くに中国人のやっている中華屋さんがあって、そこへっ持っていけば食べさせてくれるんだそうです。
なんかね、見た目はマゴイ、みたいな感じでしたよ。
サカナ、全然詳しくないです。
へええ、食べるんですかあ、って感じでしたけど。釣ったその人は何回か釣りあげているらしいんですね。で、その日の釣果がこれまでの最大ってことでした。
「かなり前からそこそこな数、いるんだよねえ」
アユが戻って来たっていうのはニュースになっていましたけど、ソウギョ。へええ、です。
1匹のオオモノソウギョを囲むようにして、我々2人を入れたオヤジ7人でひとしきり外来種談義。
川の中にズブズブ入っちゃった人たちは、ズボン、靴下、靴を履き替えて帰り支度ですね。
それにしても、ちゃんと用意万端なんですね。釣り人、凄いな。
ソウギョっていうサカナは中国原産の淡水魚で、環境省が生態系被害防止外来種に指定しているサカナなんだそうです。
「不味くはないんだけど、日本じゃあんまり食べないね。中国では普通に食べるらしいんだけどね。唐揚げとかでね」
ふむ。食べたこと、ないですね。メニューで見た記憶もないです。
草食性で水草を食べるんだそうですけど、大食漢なんだそうです。
「川にいるぶんには特に問題にならないと思うけど、池だとか沼に入っちゃうと、そこの生えてる草が無くなっちゃうぐらい食べるんで、その水草を生活圏にしてる他の生き物が死んじゃうんで駆除対象なんですよ」
「それとね、ソウギョっていっぱい食べていっぱい出すんだよ。そのフンで沼なんかは水質が劣化っしちゃう」
「水草が茂り過ぎたから放流されたみたいなんだけど、水草が完全に無くなっちゃったら、急にワルモノ」
「そうそう、テレビなんかで駆除作戦とかの対象になってるんだけど、多摩川にまでいるんだから、駆除とか無理でしょ」
ふううん。後から調べてみますと、テレビっていうのは「池の水ぜんぶ抜く大作戦」っていうテレビ東京の番組みたいですね。
池や沼の水を抜いて、掃除して、外来種を排除する。
要は「かいぼり」ですね。
番組自体を見たことはないんですが、外来種の排除に対しては賛同する意見と、残酷だっていう意見が出ているみたいです。
在来種を復活させようっていう行動なんだから、悪いところは何もないでしょ、っていう考え方と、在来種が生きていけなくなった理由は外来種だけに負わせられるもんじゃないっていう意見ですね。
日本人として感情的に判断するんじゃなくって、ちゃんと科学的に考えて行動すべきっていう意見もあるわけです。
ん~。ことはソウギョだけのことじゃなくって、今の世の中、全般に対して言えることなんでしょうね。
「再生可能エネルギー」っていうことに関しても、改めて考えてみますと、推し進めましょうっていうのは感情的な判断なのかもしれないです。
代表的なソーラーパネルにしても、初期世代のパネルの廃棄問題が出て来て初めて、あれ? これってどの辺までがエコなんでしょか? って問題になって来ていますし、最近の研究では、ソーラーパネルを設置した地域では、その反射熱で生態系を奪われてしまった小さな昆虫類が少なくないことが分かってきているらしいんですね。
太陽熱を利用するのはけっこうなことであっても、その利用の仕方っていうのをもう一度考え直すべきタイミングに来ているのかもしれませんね。
たくさんの種類の、人間が気にもしていない小さな虫たちがいなくなってしまっているっていうのは、生態系に悪影響が出てきちゃう心配があるんだとか。
単純に外来種を駆除すればイイ。自然エネルギーを利用するのは問題はなく正しい。って考えるのって、実は感情的判断ですよねって指摘されちゃうと、考え込まざるを得ないところがあります。
でもねえ、地球環境、このままでイイわけはないんで、なんとかしなきゃいけないっていうのは事実なんだろうと思いますね。
ただ、その方法ですね。
感情的な判断で、国内環境、地球環境にイイことをしているつもりが、っていうのは避けた方が賢明ですもんね。
東京、吉祥寺の弁天池のかいぼりって、定期的にやっていると思うんですけど、池の中から廃棄自転車が数百台引き上げられたりしたニュースがだいぶ前にありました。
外来種だ、自然エネルギーだっていう以前の問題。なんで池の中に自転車。
そんな段階からやっていかなきゃいけませんよ、ってなことを言い始めると、いったい何からやり始めればイイのか、すごく複雑な感じです。
ま、現代社会の問題っていうのは1つじゃないわけですから、同時多発的な解決行動が求められているんでしょうね。かなり難しいことなんですねえ。
川や池の在来種が、外来種を駆除すれば戻って来るっていう単純なことじゃないことは間違いないそうです。
かいぼりは長いスパンで計画的に繰り返さないといけないこと。
そう言われてみれば、日本の湖沼って、国内外来種ばっかりですよっていう話も聞きますね。
自転車を池に捨てる人の感覚と、ブラックバスを沼に放す人の感覚は全然違うんでしょうけれど、商売的な効率を考えての行動だとすれば、結局は自分で自分の首を、ってことなのかもです。
工業的開発の場面で「リテラシー」っていう言葉が使われることが普通になって来ていますけど、あらゆる方面でリテラシーの共有っていうのを進めていって、そこから新しいアイディアを引き出していかないと、外来種、在来種とか言っている間に人類そのものの存続が厳しくなっていきそうです。
ホッピーの瓶ってサスティナブルなんですよね。多摩川べりで作っていたんでありますよ。
ソウギョの唐揚げで一杯。ん~。ソウギョを食べない理由って、なんかありそうな気もするんですけど、ただ単にニンキないから、ってことなんでしょうか。
分かりませんです。