< 「花札」の絵柄っていう 日本の「花鳥風月」を愛でる心 >
花札の「こいこい」が一般的に遊ばれるようになったのは、昭和に入ってからなんだそうで、「花合わせ」の方が古くから人気だったそうです。
ま、「花合わせ」の方が単純なルールですし、2人でやる「こいこい」っていうのはポーカーの「コール(続ける)」とか「ドロップ(止める)」っていうのと似たような、「こい」「こいこい」っていうゲームの駆け引きもあって熱くなりやすいルールですもんね。
家族のリクリエーションとかには向いていないのかもです。
まあ、ローカルルールで楽しくやればイイんでしょうけどね。
全ての日本人が生まれる前からあって、たぶんおそらく、ずっと同じ絵柄なんだろうと思われる花札。
安土桃山時代ぐらいからあるんじゃないかってことらしいんですけど、そのころから引き継がれている花鳥風月なんでしょうね。
身近に思える遊具ですし、なんとなく惹かれるものを感じますけど、一枚一枚の絵の意味ってさっぱり分かりません。
今や2兆円にせまろうかっていう売上高を記録して、押しも押されもせぬゲームメーカーの任天堂ですが、そのスタートは1889年、明治22年開業の「任天堂骨牌(ニンテンドウカルタ)」
花札の製造、販売の会社だったんですね。
いわゆるばくち打ちの道具として「運を天に任せる」ってことで「任天」って名前なんだそうです。
ギャンブラー!
1902年、明治35年からは日本で初めてのトランプ製造、販売を始めて、さらに1953年、昭和28年には、これもまた日本で初めてのプラスティック製トランプを製造、販売を始めています。
花札の時代から製品のデザインに対するこだわりを持って「花札屋さん」の任天堂は商売を続けてきたんですね。
そして1983年、昭和58年、「ファミリーコンピュータ」を発売して以来、花札屋さんから世界的なゲームプラットフォーマーの道を進んでいるってことなわけです。
花札の製造、販売は今でもやってますけどね。
どうでしょうか、最近、花札で遊びました? 知ってはいても手にすることって少ないかもしれないですよね。
身近には置いていないとも幾つかの絵柄は思い出すことが出来そうです。
どんなのがありましたっけねえ。
花札は1年12ヶ月に分けられていて、1ヶ月に4枚ずつの札が割り当てられているんです。全部で48枚ですね。
絵柄の組み合わせによってそれぞれの点数が決められているのが「こいこい」
1枚1枚の札にそれぞれ点数が割り当てられていて、その合計点で競うのが「花合わせ」ですね。
1ヶ月に割り当てられている札の数はどの月も4枚で同じなんですが、札の点数は月によってばらつきがあるってところが花札の特徴。
月ごとに札の絵柄と点数をおさらいしてみましょう。
1月、睦月(むつき)は松と鶴が割り当てられていて、1月の札の点数は4枚で27点です。
「松に鶴」は光札(ひかりふだ)っていう種類で、20点。
「松に赤短」は短冊札。「あかよろし」って書いてある短冊ですね。5点。
「松のカス」が2枚。各1点。カスっていう言い方が勝負っぽいところかもしれません。素札っていう言い方もあるそうです。
2月、如月(きさらぎ)は梅とウグイスが割り当てられていて、2月の札の点数は4枚で17点。
「梅にウグイス」は種札(たねふだ)、10点。ウグイスって言ってますけどメジロらしいです。
「梅に赤短」は短冊札、5点。
「梅のカス」が2枚、各1点。
3月、弥生(やよい)は桜が割り当てられていますが、鳥や動物は割り当てられていません。4枚で27点。
「桜に幕」は花見の席の幔幕(まんまく)が描かれた光札、20点。
「桜に赤短」は短冊札、5点。
「桜のカス」が2枚、各1点。
4月、卯月(うづき)は藤とホトトギスが割り当てられていて、4枚で17点。
「藤にホトトギス」は種札、10点。
「藤に短冊」は短冊札。赤い短冊に「あかよろし」の文字は書かれていません。5点。
「藤のカス」が2枚、各1点。
5月、皐月(さつき)はアヤメが割り当てられていて、鳥や動物は割り当てられていません。4枚で17点。
「アヤメに八つ橋」って言われていますが、絵はカキツバタだそうです。
在原業平が名古屋の八つ橋という土地で詠んだ歌「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」から単語の頭の文字1字をとってきて「かきつはた」って読む「折句」から取って来た絵柄なんだそうです。種札、10点。
「アヤメに短冊」は短冊札。赤い短冊に「あかよろし」の文字は書かれていません。5点。
「アヤメのカス」が2枚、各1点。
6月、水無月(みなづき)は牡丹と蝶が割り当てられていて、4枚で17点。
「牡丹に蝶」は種札、10点。
「牡丹に青短」は短冊札。青い短冊です、文字は書かれていませんね。5点。
「牡丹のカス」が2枚、各1点。
7月、文月(ふみづき)は萩と猪が割り当てられていて、4枚で17点。
「萩に猪」は種札、10点。
「萩に短冊」は短冊札。赤い短冊に「あかよろし」の文字は書かれていません。5点。
「萩のカス」が2枚、各1点。
8月、葉月(はづき)はススキに月と雁(かり)が割り当てられていて、4枚で32点。
「ススキに月」は光札、20点。
「ススキに雁」は種札、10点。
「ススキのカス」が2枚、各1点。
9月、長月(ながつき)は菊が割り当てられていて、鳥や動物は割り当てられていません。4枚で17点。
「菊に盃」は種札、10点。
「菊に青短」は短冊札。青い短冊に文字は書かれていません。5点。
「菊のカス」が2枚、各1点。
10月、神無月(かんなづき)は紅葉と鹿が割り当てられていて、4枚で17点。
「紅葉に鹿」は種札、10点。
「紅葉に青短」は短冊札。青い短冊に文字は書かれていません。5点。
「紅葉のカス」が2枚、各1点。
11月、霜月(しもつき)は柳とツバメが割り当てられていますが、何故か人間とカエルも描かれています。4枚で36点。1年のうちで一番点数の高い月です。
「柳に小野道風」は光札、20点。
柳の垂れ下がった葉に飛びつこうとしているカエルを、傘を差した小野道風が見つめている絵です。
ああ、自分ももっと頑張らなくては、と思ったとかいうエピソードですね。
有名なエピソードだから絵面にしたっていうより、花札に描かれたからみんなが知ってるっていうエピソードのような気もしますけどね。
だって小野道風って誰やねん? 感じですよ。
平安時代前期の貴族。能書家だったそうです。でもやっぱり、誰やねん? なんやねん?
「柳にツバメ」は種札、10点。どうもねツバメには見えませんよ。キジっぽいなあって思います。
「柳に短冊」」は短冊札。赤い短冊に「あかよろし」の文字は書かれていません。5点。
「柳のカス」1点。
12月、師走(しわす)は桐と鳳凰が割り当てられていて、4枚で23点。
「桐に鳳凰」は光札、20点。
「桐のカス」が3枚、各1点。
月ごとに並べて見ますと、統一性とか、ホントないですね。
そこが花札の面白いところなんだと思います。
絵面はどれも、根拠なく日本的だなあって思ってしまいます。刷り込み現象なのかもですけどね。
「こいこい」の役は当然のことながら、光札を集めれば高得点になります。
全部で5枚ある光札を集めれば「五光」という役で10点の最高得点です。
「四光」8点、「雨四光」7点、「三光」5点と続きます。
で、花札なんてやったことないよっていう人でも、聞いたことがあるだろうっていう役が「猪鹿蝶(いのしかちょう)」じゃないでしょうか。
種札3枚で5点の手です。
なんでこれが高得点の役になっているのか。
ちょこっと調べてみて、いろいろあたってみたんですが、結果、知らんがな! ってことみたいです。
蝶々が入ってますけど、花札の中で虫はこの「牡丹に蝶」だけです。
蝶々は回生、復活の象徴なんだそうですけど、ふううんって感じですかね。
「牡丹に蝶」よりも、たぶんおそらくキジだろうって思える「柳にツバメ」の方が、「萩に猪」「紅葉に鹿」とのバランスは良さそうに思えますけどね。
語呂なんでしょうか。
イノシカチョウ、だから高得点の役っぽい響きがあるんで、イノシカツバメ、とか、イノシカキジじゃ締まらないってことなんでしょうかね。
いや、そうじゃないでしょねえ。
とにかく猪鹿蝶って揃えると気持ちイイんです、日本人だから? 知らんけど。
「桜に幕」に「菊に盃」で、花見で一杯。
「ススキに月」に「菊に盃」で、月見で一杯。なんてね、お目出度い役も日本人としてはピッタシきますよね。