< 軒下の こしらへ滝や 心太 ってさ「しんた」じゃんね「ところてん」って読むの ムリッ! >
これは小林一茶(1763~1828)の俳句ですが、「こしらへ滝」っていうところがミソでしょうか。
「天突き」っていう例の四角いところてん製造機! から突き出されたところてんが、ザっと流れ落ちてくるところを、人がこしらえた滝みたいだねえ、って句なんでしょう。
信濃で生まれて江戸で暮らした小林一茶ですが、どんな食べ方をしていたんでしょうかね。
お好きだったんでしょうかねえ、夏のところてん。
しょう油は戦国時代にはすでにあったらしいですが、一般庶民が普通に使えるようになったのは18世紀ごろっていうことみたいですから、小林一茶はぎりぎり間に合っていたでしょうか。
酢しょう油っていうのが江戸では一般的だったと思われますが、砂糖なんかは贅沢品だったでしょうからね。
ところてんの食べ方にはいろいろあるみたいですが、今と同じような調味料の種類って、江戸時代には無いですもんね。
いつ頃から食べられていたんでしょうかね、ところてんって。
誰が考え出したの?
奈良時代には既に食べられていたっていう記録もあるそうですが、よくまあ、作り出しましたよね。
ところてんの発祥っていうのは、テングサを煮溶かしたものを放置して、偶然に出来たんじゃないかってことらしいんですが、どうもね、納得いかない感じです。
偶然って言ってもですね、テングサを煮溶かした状態のものは、何に使っていたんでしょうか。
食用としてのスープ? 食用としていたんであれば、何もわざわざ火を起こして、土器に入れてなんでしょうけど煮溶かすような手間をかけるでしょうかね。
そのまま食べればイイじゃん。
加工しなくちゃ食べられないものでもなし、煮溶かしてから冷やして固めるっていう製法が不思議過ぎるんで、説明として偶然できちゃったってことにされてるように思えてしまいます。
もしかすると、テングサスープはところてんを作るためじゃなくって、保存食としての「寒天」を作るための途中工程だったんじゃないでしょうか。
ところてんを凍らせて、乾燥させたものが寒天ですよね。
寒天なら長持ちします。簡単に水で戻せますし、すぐに食べられます。
古代の日本で、寒天作りが盛んになるにつれて、テングサスープを凍らせて乾燥させて、また水で戻して食べるわけですから、これさあ、途中の状態でも食べられそうだよね。
この凍ったテングサスープ。
ってことで食べてみたら、寒天にしてから食べるより風味がある。
こっちの方がヨクナイ? って感じで食べられるようになったのがところてん。知らんけど。
でも実際、寒天は無味無臭って感じで、そのままを食べるってことはないと思うんですが、ところてんには風味があって、そのままをいろんな食べ方をして今に伝わっているんじゃないでしょうかね。
99%が水分で、残りはミネラルっていうんでダイエット食としての人気もかなり高いみたいです。
ところてんは漢字で「心太」って書きますよね。
これ、ちょっと無理がありますよね。
「しんた」でしょ。強いて読むなら「こころふと」
なんで「心太」に「ところてん」っていう読みを付けたんでしょう。
ん? 逆ですかね。「ところてん」って読みに「心太」っていう漢字を宛てた?
違いますかねえ。ま、ものの名前って由来の説がいくつもあるっていうのが普通ですからね。
今となっては、何がホントなのかとか、誰にも分からないっていうものなんでしょう。
そもそも原材料の「テングサ」の古い名前は「凝藻葉(こるもは)」っていうんだそうですね。
凝るっていうのは、肩が凝るだとかに使われる言葉ですよね。
「こる」って読めば、固まる。あるいは熱中するってニュアンスですが、「こごる」って読めば、凝固するって意味になります。
藻は海藻そのものですから、固まる藻の葉、っていう名前はテングサそのものを素直に言い表した言葉として理解できます。
で、その凝藻葉が、いつ頃から「天草(テングサ)」って呼ばれるようになったんでしょうね。
熊本県の「天草(あまくさ)」は「海女」の「民草」で「海女草」から「天草」になったんじゃないかって言われているみたいですけど、「あま」ですもんね。
テングサは「テン」天の草ですよ。サカナも貝も獲れなくって食糧危機に陥った時に凝藻葉を食べて命を繋いだ、みたいなことが何回か有って、それで天の恵みってことなんでしょうか。
分かりませんね。
で、そのテングサを煮溶かして加工したものが「心太(ところてん)」っていう名前になったのは、もっと分かりませんね。
そもそもが「こころぶと」って呼ばれていたんだっていう説があるんだそうですが、これまた、そのまますんなり納得できる説じゃないです。
どこから「こころ」って言葉が出てきたんでしょう。
正倉院の書物の中に「心天」っていう言葉で記されているんだそうで、これって「シンテン」じゃなくって「ココロテン」って読んで、こころてんから「ところてん」なんじゃないかって説もありますねえ。
なるほど、って言ってもですね、なんで、こころてんやねん! って感じのところが納得できませんねえ。
それに「こころ」から「ところ」っていうふうに変化するっていうのも、どうもねえ。
ただ「心天」っていう漢字表記から「心太」に変化したっていうのであれば、ほほうって思います。
天と太っていう字は、太陽、太河、太平だとか、大きさの表現として通じるものを感じます。
でもねえ、心太って書いてところてんって最初から読める人なんていないと思いますねえ。
ってことで、名前の由来についてはさっぱり分かりませんでした。っていうか、納得できる由来に行きつけませんでした。
天突きっていう、あのところてん製造機の名前はところ天を突きだすから天突きなんでしょうね。
名前の由来とは何の関連もなく、ところてんは日本全国でいろいろな食べられ方をしています。
細長い麺状で食べますよね。
酢しょう油でっていうのは全国区でしょうけど、そこにカラシ、ショウガっていうのがスタンダード。
でも酢しょう油に砂糖っていうパターンも多いみたいです。
味噌や、蕎麦つゆっていうのもありますよ。
甘味処にあるメニューだと黒蜜ですよね。これもなかなかスタンダード。
黒蜜におろししょうが、っていうのもありますし、黒蜜にバニラアイスっていうのもあるんですよね。
ところてんをスッキリ系のおやつと認識しているか、スイーツ系として甘さが重要って捉えているか、っていうのが普通だと思っていたんですが、調べてみますと、完全にご飯のおかずっていうパターンもけっこうあるんでした。
主食っていうのもあって、ところてんを中華麺代わりですね。いろんな具材を入れてマヨネーズでいくみたいです。
ま、酒のアテっていうのもありますね。
福島県近辺では、酢しょう油を瓶に入れて、その瓶の口に「杉の葉」を詰めてから注ぐんだそうです。
杉の香りがイイってことらしいんですが、確かにね、未経験ですけどやってみたいです。
でもねえ、東京辺りで、近所の公園に杉がドーンってあったとしても、その葉っぱを使ってっていうんじゃねえ、ダメでしょねえ。やってみようって思いません。
ところてんサラダとか、ところてんヨーグルトなんかはふむふむって納得できますけど、ところてん納豆っていうのもありますね。
オクラとかも合わせたり、ネバネバ系でヘルシーにってことなんでしょうけど、なんかね、わざわざところてんにネバネバ、乗っけなくてもイイような感じもします。合うんでしょうかね。ま、大きなお世話ですけど。
あとね、箸1本、一膳じゃなくって、1本で食べるっていうのにこだわっている人もいたりしますね。
なんで1本で食べなあかんねん、じゃまくさいわい!
あんな、ところてんいうんはな、和菓子やねん。和菓子は黒文字1本でいただくもんだっせ。
っていうことらしいんですが、何のこだわり? 食べにくいばっかしじゃん!
ちゃんと割り箸一膳を使って、ところてんを挟んで、するするって威勢よく食べましょうよ!
大喜利のベンベン節。
蕎麦のようで蕎麦でない。よお、ベンベン。
うどんのようでうどんでない。ほおベンベン。
それは何かと訊ねたら。
ところてん、かんてん、ところてん、かんてん。
はい、落語、豊竹屋でした。
ところてんは、やっぱり夏がイイですよねえ。見た目の涼しさですねえ。