< 元々ポンコツだとはいいながら なんか最近アタマの働き 鈍くなってきたような ん~ >
ちょこちょこお邪魔している居酒屋さん。
料理担当の大将と、サラダと呑みもの、サーブ担当の女将さんで回しているお店。
けっこう長く続いているらしいです。
フルに入れば40人ぐらいのパーティーはこなせるキャパです。
で、厨房がテンテコマイになると、ヘルプに大女将が登場してくるんですね。女将さんのお母さん。
初代の女将さんだそうで、娘が店に入るまでは八面六臂に切り盛りしていたっていう人なんですね。
今でもそつなくこなす元気者。
ちょっと変わった名前の居酒屋さんで、その名前は大女将が付けたっていうんで、その理由をいろんな人が聞きます。
「なんでこの名前にしたの?」
「あはは」
で、ジエンド。
で、今の女将さんのフォローが、
「覚えてないんだって。開店するときに勢いで付けたんだけど、誰に相談して聞いたんだったかも、もうとっくに、記憶の彼方なんだって」
大将に聞いてみても、
「おれは知らないよ。任せてあったから、そういうのは」
そういうのっていうのがどういうのか、よく分かりませんが、店の名前ですからね、ひた隠すような理由があるとも思えません。
かといって、そんなに盛り上がるような話でもないような空気感になっちゃいますんで、誰も詳しくは突っ込まないんですね。
みんな「……」ってなっちゃいます。
女将さんが言います。
「違うよ。ボケてんじゃないの。頭はまあ普通だと思うんだけど、店始めてだいぶ経ってからお客さんに聞かれて、あれ? なんだっけ? ってなって、全然思い出せないんだって。あたしも理由とか考えたことないし」
めちゃめちゃキビキビ動きながら、速射砲のようにしゃべりまくる大女将です。
認知症とか、そういうのとは、最も縁遠いタイプに思える人。
70歳ぐらいでしょうか。半白髪でサバサバした感じのスリムな大女将。
この前、2つの宴会グループが帰ったあとで、片づけものを終わって、大女将がカウンターの隣りにやってきました。
「ああ、疲れた。ごめんなさいね、ここ、座っちゃう。はああ」
カウンターにはわたしの他に1人だけでしたから、店内は急に静かになっていました。
疲れたって言いながらも速射砲は止りません。
「ご近所のグループさんたちなんだけどね、もうずっと使ってくれていてね、ありがたいんだけど、10人10人で重なっちゃうとね、大変よ。あたしも昔はもっと動けたんだけどねえ、このごろは疲れちゃって、もうダメね」
いや、あれだけしゃべりながら動いていれば、充分に。
「でもねえ、身体の動きが鈍くなっちゃうのはしょがないのよね。普段、運動とかもしてないし、動けなくなるわよ。だけど心配なのは頭の方なのよ。テーブルに行ってバラバラの注文を聞くでしょ。で、カウンターに戻って伝票に書こうって戻りかけると、別のテーブルからも注文入るでしょ。ハイハイって聞いて、前は何の問題もなくこなせてたんだけど、今ね、最初に受けた注文の半分ぐらい忘れちゃって、また聞きに行ったりしなくちゃならないのよね。情けないったらありゃしない。ああ、疲れたツカレタ」
いや、それは、たくさん、バラバラに注文されたら誰でもそうなるんじゃ。
「それでね、最近クロスワードパズルやり始めたのよ。知ってるでしょ、頭の体操っていうの。今ね、そういう専門の雑誌があるのね。暇さえあればやってるんだけど、ヒントの文を読んでね、ああ、あれだなってところまではいけるんだけど、それをなんて言うんだったかがね、こう、すんなり出てこないわけよ。そこで脳みそを使うのが頭の体操ってことなんでしょうけど、もおね、イライラいらいらするの。かえって身体に良くないんじゃないかしらって思うんだけど、どうなのかしらね。効果あるのかしら」
ん~、どうなんでしょう。
「芝生の庭でね、ロッキングチェアかなんかに腰おろしてね、いっつもクロスワードパズルやってるわけよ。おっきいメガネなんかかけちゃってね。それでほら、なんか事件が起きちゃうとパッパぱっぱ推理して、どんな事件でもあっさり解結に導いちゃうの。そんなおばあさんの探偵っていたわよね。いなかった? いっつもクロスワードパズルやってるから頭が錆びついてないのよね。それイイなって思ってやってるの、クロスワードパズル」
ん~。おばあさん探偵、いたような、いなかったような。
ミス・マープルって、クロスワードパズル、やってましたかね。
「認知症ね、まさか自分がなんて思ってるんだけど、やっぱり怖いんでしょうね。自分でいうのもおかしいんだけど、認知症になっちゃうんじゃないかっていうことを考え始めちゃうと、もおお、落ち込んじゃうのよね。あら、あたしだけしゃべってるわね。あっはっはっは。ごめんないさいね。ゆっくりしてってちょうだい」
はあ、ありがとうございます。ゆっくりはさせてもらっておりますです。
まあね、そうやって速射砲を撃ちまくって消え去っていくことは珍しいことでもないんで、女将さんがカウンターの中から言います。
「このところクロスワードだけじゃなくって、数独っていうのにも挑戦してて、アタマ、良くなったって言ってるんだよね」
ほほう。ああいうパズルって、アタマ、良くなるの?
「まさか良くなるってわけじゃないと思うけど、ボケ防止にはなるんじゃないのかな」
ふむ。アタマね、使わないよりは使っていた方が錆びつかないだろうっていう気はしますね。
で、効果のほどは?
「今のところ何も変わらないですよ。昔からああいう人なんだから。っていうことは効果があるのかもって言う気もするけど」
ふむ。そかもですねえ。
ある程度の年齢に達しますとですね、日常生活の中で、あれ? って思うことが出てきますですよ。
さっきまで自分は何をしようと思ってここに来たんだっけ、っていうような、あれ? ね。
ほら、なんだっけ、あれあれ、とかいうのはだいぶ前からの「症状」だったりしますからね。
そういう自分に気が付きますと、頭をかすめるのが、認知症ってやつですよねえ。
そういう不安を覚えている人って、案外、少なくないのかもなあって思います。
街の本屋さんのパズル本のコーナーって、けっこうな面積を占めていますし、そこから何の迷いもなく月刊誌を引き抜いて買っていく人たち。やっぱり年齢層、高めな印象です。
みんな、頭を使って、ボケないようにしようっていう気持ちを、無意識にでも持っているのかもしれません。
クロスワード、数独だとかって、一時期、流行りましたよね。今でも人気は衰えていないんでしょうか。
スマホが浸透し始めた頃には、脳トレブームっていうのもありました。
まあ、脳トレブームって、かなり前からあった頭の体操ブームの延長で、そのデジタル版だって感じなんでしょうかね。
ブームは一時的なものだとしても、認知症に対する不安って、ことあるごとに浮かび上がってきます。
誰だって認知症にはなりたくないですよねえ。
自分は認知症なんじゃないかっていう不安に駆られて病院を受診する人って、少なくないんだそうですよ。
分かるような気がしますです。
認知症になっているかどうかのチェック項目とか、だいたい、いくつか当てはまっちゃうですもんねえ。
クリニックのドクターの話で「「脳トレを専門医が科学的根拠はないと言うワケ」っていう記事があります。
メディアやネットからの情報受け取りが過剰だって言われている21位世紀の現状ですが、受け取りを拒否しようにも方法がない、っていうのが現実の社会生活ですよね。
それで、認知症の情報を見聞きして、チェックして、もしかして自分も認知症なんじゃないかって病院に行く。
ドクターが聞きます。
「物忘れしますか?」
「時々あります」
っていう人は、だいたい心配ないんだそうです。
認知症の初期段階ってうのか、心配なのは、自分が物忘れしていることを忘れていること。
なるほどですねえ、って思います。
だいぶポンコツ度が高くなって来たなあって自覚しているうちは大丈夫、ってことなんでしょかねえ。
アルツハイマーも原因は「アミロイドβ」だっていうことが分かってきたんだそうですね。
「アミロイドβ」を脳から追い出すのに効果的なのは、しっかりした「睡眠」
眠ることによって脳が整理されるっていうことはずいぶん前から言われていることですけれど、「アミロイドβ」を追い出すっていう効果もあるんですねえ。
でも実は、しっかり、満足できるように寝るっていうのも、けっこう難しかったりするんですけどね。
「アミロイドβ」をうまく追い出す方法の、結論めいたことを探してみますと、
しっかり眠る。
全粒穀物を食べる。
芋、豆類を食べる。
果実、野菜を食べる。
酒、タバコを控える。
合成カフェインを避ける。
加工食品を避ける。
ってな感じですね。
ん~。簡単なような難しいような。
クロスワードパズルや、数独だとかの頭の体操は、「アミロイドβ」を掃除してくれるような効果はないものの、やらないよりはやった方が頭にはイイみたいです。
アタマを働かせるって、やっぱり、常に心掛けておいた方がイイんでしょうね。
いろいろと難しいもんですよねえ。
ボーッとすることが頭をリラックスさせる方法だって言いますし、あれこれアタマをひねることが錆びさせない方法だっていうことですもんねえ。
バランス良く適度にやるっていうことが肝心なんでしょねえ。
ネットにクロスワードパズルや数独。無料でやれるサイトもありますよ。
やってみましょうかねえ。少しはポンコツ度が良くなることを期待して。
だからあ、良くはならないの! 現状維持。
ああ、そうねえ、頭の体操ねえ。
速射砲でしゃべれる人は、心配ないような。。。
ミス・マープルって、普段、なにしてるんでしたっけ?