< 誰だって死ぬまで健康でいたいって思うですけど 何が正しい情報なのか それが問題 >
え~。毎度まいど、バカバカしいお噺でお耳汚しを失礼させていただいております。
今回もひとつ、最後までお付き合いのほど、よろしくお願い申しあげておきますが。
まあ、なんでございますね。2023年の春を過ぎましてね、みなさんマスクをそろそろと、しなくなりはじめました。
どうですか、まだマスクしたままですか。
もちろん通勤電車なんかでは、みなさんマスクをしているようですけれども、郊外での散歩の時なんかはね、外してもよさそうに思いますですねえ。
けどねえ、日本はね、なんかこう外しにくい文化だ、なんてね、そんなことを言いますね。
まだまだみんなマスクしてんだから、自分だけ外すってのはやっぱりし難いもんなんですよね、日本人ってのはね。
仕事だとか、立場。なんていうんですか、TPOってんですか。そういうね、PTAの親戚みたいなやつでもってですね、みんな、それぞれに考えるわけで。
それでよろしいかと思っております。
こないだね、ファミレスでね、後ろの席のお母さんと、中学生ぐらいなんでしょうかね、男の子が食事してましてね。ま、なにを召し上がってらっしゃったのかは知りませんけれども、背中側ですからね。
男の子の声が聞こえて来まして。
「だけどさあ、マスク外してイイよって言われるとさあ。最初はみんな外さなかったんだけど、1人外すと、みんな一気に外しちゃうからさあ。オレだって外さないとさあ」
ね、お年頃でございますからね、さあさあサアサアばっかり言って、話がなかなか前に進みませんよ。
お母さんが言いますね。
「いいじゃないの、マスク外したって。暑いから嫌だって言ってたでしょ」
「たしかに暑いんだけどさあ、ちょっとさあ、困るんだよね」
「困る? なんでよ、マスク外して何に困ることがあんの」
「早弁、しにくいんだよね。バレちゃうじゃん」
お母さんの代わりに言ってあげましたよ。そんなの、一生、困ってなさい。
いえいえ、もちろん声には出しませんでしたけれどね。はい。
え~。コロナっていうのもね、消え去ってくれたってわけじゃございませんでね、気を付けなくっちゃいけないんだそうですよ。まだまだね。
換気に気を付けて、衛生第一。
季節外れのインフルエンザの流行なんてのもありますしね。
なんだか気の休まる暇のないきょうこのごろ、なんでございましてね、どうにもやりきれません。
インフルエンザっていえば、鳥インフルエンザね。
人間ばかりじゃなくってニワトリさんもなかなか大変ですよ。
なにせ、凄い数の殺処分ってニュース、やってましたでしょ。あっちでもこっちでもってね。
殺処分なんてね、イヤな響きの言葉じゃございませんか。
もっとなんとか、考えられた表現ってもんがありそうにも思いますけれどね。
ま、なんにしてもですね、どんどん日本のニワトリ、いなくなっちゃったわけです。
ところがね、不思議なのは、から揚げですよ。
ちっとも数が減ってないように思いませんか。あっちのから揚げ屋さん、こっちのから揚げ専門店。肉を食べる方のニワトリさんはインフルエンザの影響を受けてないんでしょうかね。
影響を受けてんのは、ニワトリの素。タマゴですね。
高くなりましたでしょ。家計に響きますよねえ。
タマゴを産むニワトリをどんどん処分しちゃってんですから、そりゃあタマゴの数も少なくなろうってもんです。
日本にいるニワトリの1割以上を処分しちゃってるっていうんですから、深刻です。
ナマでタマゴを食べる習慣っていうのは日本ぐらいなもんなんだそうですね。
みんな好きですもんね。われわれ、日本人。タマゴかけごはんとか。
個人的にはですね、TKGっていうやつね。どうも気にいりませんよ。その表現がね。
日本のタマゴと日本のごはんに、日本のしょう油なんですよ。それをなんだってアルファベットで言わなくっちゃいけないんでしょうか。
メニューにアルファベットでね、TKGなんて大書きしてある店もね、あんですよ。
分かっちゃないねえ、なんてね、勝手に憤慨しております。
タマゴについてね、忘れられない思い出がありましてね、小学校のセンセが話してくれたんですけど。
学校の勉強のことなんて、何にも覚えちゃいませんけれども、このタマゴの話ってのは不思議に覚えてんです。
そのジサマのセンセが子どものころの話ってんですから、もうだいぶ昔ですよ。
戦後すぐのころ。
ね、もう今の人たちには通じないほど前の日本です。
山形県出身のセンセでしたがね、そのセンセの御母堂が東京の女学校出のね、モダンでハイカラな人だったんだそうです。
どうですか、通じてますかね。
女学校出、とか、モダン、ハイカラとか、ほとんど死語かもしれませんが、大丈夫でしょうかね。
ま、気にせずにまいりますが。
そのころのタマゴってのは貴重品でね、高かったし、普通に食べられるもんじゃなかったらしいんです。
食習慣にタマゴってのは入ってなかった。
でもね、その御母堂は、なにせハイカラですから。オムレツが大好物だったそうなんです。
女学校の東京では当たり前に食べていらっしゃったんでしょうね。
でも山形県の、なんていう町って言っていたのか忘れちゃいましたけど、そこのスーパーなんかには売ってないんで諦めていたんだそなんです。オムレツ。
ところがある日、頑丈な自転車の前かごと後ろかごに、麦わらをこんもりと敷き込んで、農家のおばさんがタマゴを売りに来たんだそうです。
ウソかホントか分かりませんけどね、そのタマゴ売りのおばさんはね、チャルメラを吹きながら来るんだそうです。
夜泣き蕎麦、豆腐。
昔はなんでもチャルメラだったんですかね。
プーって鳴らして、タマゴー、って来たんだそうですよ。
センセもお母堂と一緒に表に出て、タマゴおばさんを呼び止めたんだそうです。
御母堂はザルを差し出して10個注文します。
タマゴおばさんは、前掛けでタマゴを1個1個拭きながら丁寧にザルに入れながら、じっと御母堂の顔を見て言ったそうです。
「きょうは、なかなか売れないもんだから、普段は来ないこっちの方へ廻って来たんですけど、10個もタマゴが要るっていうのは、どなたか病気なんですか。タマゴは精が付きますからね、2個オマケしておきますよ。早く良くなるとイイですね」
家の中に入ってから、御母堂は一人で大笑いしていたんだそうですね。
分かりますかね、この話。
日本人がタマゴを食べるようになったのは江戸時代の中頃じゃないかって言われているそうなんですけどね、普通にTKGだとかで食べるもんじゃなかったってことなんですよ。昭和になっても、都市部以外では。
ギャップが、今じゃ考えらえないぐらい大きかったんですねえ。
栄養があるのは分かっているけれども、日常食じゃなかったってことでしょうね。
ほぼクスリ的なポジションです、タマゴ。
養鶏なんてのもそんなに普及していなくって、農家の庭を走り回ってる元気なニワトリたちが産んだタマゴを、直接、農家のおばさんがチャルメラ吹きながら売りに来る。
最上級のタマゴでしょねえ。
その日、ちっちゃい子どもだったころのセンセは、生まれて初めてプレーンオムレツってのを食べたんだそうです。
センセはこう言いました。
「君たち、タマゴというものは滋養の最たるものですからね、大切に、ありがたく、たくさん食べて、立派な大人になってください」
昭和のどのあたりが転換点だったのか分かりませんけどね、もの心ついた頃には、タマゴが貴重なモノだって感覚はなかったっていう人がほとんどですよね。
タマゴをありがたがる気持ち、そんなになかったような気がしますもんね。
価格の優等生なんて言われてましたよ。
やがてね、安くて旨いからって、毎日大量に食べるもんじゃない、なんて言われ始めました。
1日に1個ぐらいにしておかないと、コレステロールっていうのが溜まっちゃって、身体にワルイよ、なんてね。
へええ、そゆもんですかって、みんな思ってたでしょ。ね。
滋養の最たるものが、ワルモノになっちゃったんです、これ。
コレステロールなんてのが、どんなヤツだか知りゃしませんけれども、タマゴは毎日まいにち、そんなにしょっちゅう食べちゃいけないもんだって、信じてましたよね。素直ですからね。みなさん、そうでしょ。
健康情報に対する信頼ってのは、たいていの人が無批判に受け入れちゃいますからね。
そのうちメタボだとか言い始めましてね、善玉コレステロール、悪玉コレステロールなんていって、コレステロールってのが2つに別れちゃった。
健康診断で気にしなきゃいけない数値になっちゃいましたよね。
そんでまた、最近、タマゴって言いますかコレステロールについての健康情報が変わっちゃったんですね。
ええ、そうなんです、また変わったんです。
タマゴってのはですね、黄身にコレステロールが多いんだそうです。
それであんまり食べるな、1日1個にしておけ、とかね、そう言われていたんですけど、そもそもコレステロールに善玉、悪玉なんていう言い方で区別しちゃってること自体が、違うってことらしいんですね。
悪玉って言われちゃってる「LDLコレステロール」ってのはね、別に悪さをするヤツじゃないってんですよ。
そもそもね、コレステロールってのがなんなのかって言いますとね、肝臓で作られて、身体中を巡って、細胞膜、ホルモン、胆汁酸だとかね、生きていくために必要な成分を作り出す原料なんだそうです。
コレステロールって、人間にとって、とっても重要な、必須必要成分だってことです。
で、悪玉ってネーミングされちゃった「LDLコレステロール」はコレステロールを体全体に運ぶ役割を果たしてる。
ね、こりゃ悪さじゃなくって大事な働きでございましょ。
なんで悪玉なんて言われちゃってたんでしょ。
で、身体じゅうに運ばれて使われずに血管の中にたまっているコレステロールを肝臓に運んで戻す役割をしてるのが、こっちは善玉って言われている「HDLコレステロール」
だからね、両方なくっちゃダメなんです。バランス良くね、両方とも必要。
あとはタマゴを食べる量ですね、ボリューム。
これはタマゴ云々っていうんじゃなくって、コレステロールの摂取量を気にしているわけですよね。
ところがですね、コレステロールの摂取量に基準っていうのが、2015年からなくなっちゃってるんです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」っていうのから、コレステロールの摂取目標量っていうのが消えちゃってるんですよ。いや、ホントに。
前はコレステロールの摂取目標量っていうのは、成人男性が750ミリグラム、女性は600ミリグラムを上限として設定されていたそうなんですけどね、研究が進んだ結果、コレステロールの摂取目標量に充分な科学的根拠がないってことで、目標量、撤廃。
ってことなんでありますよ。変わったんです。
だからって言ってね、食べ過ぎは、タマゴに限らずロクなことにはならないわけで、常識的にってことではありますよ。
常識ってなんだ、ってことについてはね、それは、ご自分でご判断くださいませ。
やたらと健康情報に振り回されている我々ですが、まあね、健康科学ってのも、まだまだ発展途上ってことなんでありましょうね。
オムレツね、タマゴ2個、よりも3個のボリュームが好きなんですけれどね、のべつまくなし、毎日食べるってもんでもありませんでね。
コレステロール、そんなに気にしないでもイイのかもしれません。
ちなみに、森永ミルクキャラメルの箱には「滋養豊富 風味絶景」って書いてありますよねえ。
昔からね。大好きな滋養であります。森永ミルクキャラメル。
おあとがよろしいようで。