< 日本は集団思考特性っていうのが他の国に比べて特に悪い方に高いんじゃないでしょうか >
英語の「Group Think」に対して充てられている日本語訳が「集団思考」ってことになるんですが、「集団浅慮」っていうふうにも訳されています。
意味合い的には浅慮っていう方が内容をよく表しているかもしれません。
その集団の構成員、1人1人はとっても優秀な人であるのに、その集団としての思考が、かなり非合理な、ときには明らかに間違った判断をすることを「集団思考」って言うらしいんですね。
個人的に「集団思考」っていう概念を知ったのはつい最近のことなんですが、こうした捉え方については、アメリカが先んじているみたいです。
民族誌学のパイオニア「ウィリアム・フート・ホワイト(1914~2000)」が、1952年に科学雑誌の中で「集団思考」っていう言葉を使い始めたそうです。
アメリカ国内に数あるコミュニティの特徴を示す言葉として作り出されたのかもしれませんね。
ホワイトが使い始めた頃の「集団思考」には、必ずしも非合理だとか間違ったっていうニュアンスがメインじゃなかったようにも感じられます。
集団としての結論が、個人こじんの思惑とは違ったものになる、っていう集団思考、でしょうかね。
1970年代ごろには、同じくアメリカの実験心理学者「アーヴィング・エル・ジャニス(1918~1990)」が、政治分析に集団思考を適用して研究を進めたことが知られています。
研究の対象となったのは、アメリカにとってかなり決定的だった危機を取り上げて、なぜ、そんな重大な場面でアメリカ政府は間違った判断をしてしまったのか、その原因を「集団思考」に求めているわけですね。
1つは日本との関わりです。
1941年12月8日の「真珠湾攻撃」
ワシントンDC、およびハワイのアメリカ陸海軍は、なぜ日本の真珠湾攻撃の可能性を過小評価してしまったのか。
1950年から1953年にかけての「朝鮮戦争」
国連軍が38度線を越えて進軍すれば中国が参戦してくる可能性を検討しなかったのはなぜか。
朝鮮戦争は、いまだに休戦状態だっていう事実は、これもまた世界各国の「集団思考」のなせる業、なのかもしれませんよね。
1954年から1975年にかけての「ベトナム戦争」
ベトナム戦争において、ジョンソン政権は1964年から1967年にかけて、反対意見を押し切って戦争を拡大させたのはなぜか。
1961年4月に起きた「ピッグス湾事件」
前政権とCIAが立案したキューバ侵攻作戦の非現実的な無謀さをケネディ政権が見逃したのはなぜか。
1972年に起きた「ウォーターゲート事件」
CIA工作員による民主党本部への盗聴侵入というバカげた行為が、ニクソン政権へ与える根本的な危険性を認識しなかったのはなぜか。
後から考えてみれば、誰か止める人っていなかったの? っていうようなことばかりなんですけど、問題なのは、そうした非合理な決定を下した人たち、そのグループがエリートの集団だってことですね。
優秀な人たちが集まっているのにもかかわらず、アンポンタンな結論を出しちゃう。
それが「集団思考」
優秀な頭脳を集めたら優秀じゃなくなっちゃうっていう、不可思議な現象ですね。
大量破壊兵器の保有を理由として行われたイラク戦争も、事前の情報収集、分析結果の報道だとか、やっぱりそこにも「集団思考」があったって結論付けられているみたいです。
アメリカの「集団思考」の中で、具体的に報道されているものに、1986年の「スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故」があります。
スペースシャトルの運用はNASAの大きなミッションでしたし、かなりショックな事故でした。
この衆人環視の中で起きてしまった事故が「集団思考」によるものだって結論付けられているんですね。
スペースシャトルは、準備段階の大気圏内飛行を1977年に始めて、2011年まで続いた壮大なプロジェクトでした。
パイロットばかりじゃなくって、当然ながら、NASAの上層部は「優秀な人たち」の集まりなはずです。
どこから「集団思考」が入り込んできたんでしょうか。
「スペースシャトル・エンタープライズ」は、初飛行した1977年のうちに4回の大気圏内飛行を実施しています。
いきなり宇宙空間へ飛び出していったわけじゃなくって、大気圏内を飛行して、様々なデータを収集、スペースシャトルの改良を繰り返すっていう慎重な態度が見られますよね。
1981年に「スペースシャトル・コロンビア」が初めて宇宙空間へ飛び出します。
宇宙空間からの帰還を果たしたコロンビアは、1982年に4人のパイロットを乗せて実用飛行を成功させます。
1983年には「スペースシャトル・チャレンジャー」の初飛行成功。
1984年には「スペースシャトル・ディスカバリー」の初飛行成功。
1985年には「スペースシャトル・アトランティス」の初飛行成功。
飛行できる機体数を増やしていったんですね。
そして1986年、チャレンジャー、2回目の発射の時に、あの痛ましい事故が起こったわけです。
2003年には4回目の飛行だったコロンビアが、大気圏再突入時に空中分解してしまうっていう、チャレンジャーの経験を生かせなかったともいえる事故で、7人のパイロットを失くしてしまったんですね。
チェレンジャーの場合には、発射する前に結合部分の「Oリング」っていうゴム製の部品が、発射日の気温条件では低温過ぎて弾力が失われる懸念が現場からだされていたにも関わらず、NASA上層部が無視して強行発射したのが、原因だってされているんですね。
一度成功している機体だからっていう、過剰な自信があったのかもしれません。
発射から73秒後の「爆発」っていうふうに報道された記憶ですが、チャレンジャーは爆発じゃなくって空中分解だったんだそうです。
爆発した煙のように見えていたのは、まだタップリ残っていた燃料が飛び散ったガス。
コロンビアの事故も、はがれかかった耐熱タイルを宇宙空間での作業として修理するよう要望が現場から出ていたんだそうですが、NASA上層部は宇宙空間での作業を指示せず、現場の心配がそのまま事故につながってしまったわけなんですね。
こういうことは、事故が起こってから、後付けの情報として、我々が知ることになります。
そういう意味においては、アメリカは、NASAはオープンだって言えるでしょうね。
正直に原因を分析して報告しています。
ま、どこまで正直なのかについては、いろいろな憶測を呼んでいる部分もありますけれどね。
アメリカの「集団思考」を対岸の火事に出来ないのが現在の日本ですよね。
マイナンバーカード。
「マイナンバー情報総点検本部」ってなんなんでしょう。
日本的集団思考。
デジタル後進国からの脱却を焦る気持ちは分からないでもないですけど、マイナンバーカードに何の情報を紐づけるのかっていう考えが、どうみても刹那的で、あれもこれもって、後付けで仕様を変えていったら、システム制作側も混乱しちゃいました。っていう状態で、いろんなトラブルが出てきちゃったんで「マイナンバー情報総点検本部」ってことでしょねえ。
現時点の問題点を総ざらいするっていうのが目的なんだそうですよ。
デジタル音痴のオジオバが集まって旗を振れば、何かが解決するっていう発想は、アメリカ的集団思考とは根本的に内容が違っている、まさに日本的集団思考でしかないように思えます。
具体的にどこの会社がシステム開発を行っているのか知りませんが、今現在のシステム運用・保守レベルの設計思想じゃダメなんじゃないですか。
それこそ、もっとアナログチックにシステム全体を考えないと融通利かないでしょ。
「マイナンバー情報総点検本部」とかいって、問題解決を急いでいる姿勢を見せました、ってことなんでしょうけど、あなたがたね、問題がなんなのかっていう認識が出来ていないんじゃないですか。
「あなたがた」っていうのが具体的に誰なのか、知りませんけどね。
今現在バラバラに存在しているデータを、単純にくっ付けようとしているから起きるトラブルのように思えるニュースばっかりなんですよね。次から次に。
マイナンバーカードっていう基本情報の中心になるコアのシステムって、どこにあるの?
それがなくって、それぞれ別のシステムからデータを入力させるって、全然デジタルシステムじゃないですよ。
ログアウトしないから次の人の入力情報が、って、恥ずかしいでしょ。
何のチェックもなしに入力させているってことですもんね。
入力完了の確認フェーズ、ないの?
個人情報を扱っているっていう認識、ないの?
そもそも、なんで直接マイナンバーカードに入力させちゃうの?
いろんな分野で管理しているキーコードが分かれば、それをリンクIDにして必要情報を作るときだけ必要な情報だけを閲覧レベルに合わせて抜き出せばそれでイイんじゃないの?
マイナンバー情報が個人の健康情報を直接持つんじゃなくって、必要な時に、必要とする人の認証を経てリレー入手すれば足りるんじゃないですかね。
マイナンバーカードが他人の手に渡ったら、全ての情報が見られますって、まさかそういうふうにはなりませんよね?
セキュリティとかも、ちゃんと考えて欲しいです。
開発現場が声を上げにくいのかもしれない、日本的集団思考。
デジタルは人任せ、って、そういう人。政治家になっちゃダメな時代に来ているんだと思いますよ。
ふんとにもお!