< いやイイんです GoToとかお得なチケットとかなくたって 温泉で のほほ~ん したいですう >
男性化粧品っていうのも、今やしっかり市民権を得ているようでして、いろんな商品が喧しく宣伝されていますね。
男性にも美肌、ってなことをうたっているものもあります。
まあね、イイっちゃイイことではあるんですけど、そういうのは若々しい青年が使うものかなって思っていたわけであります。
ところがですね、呑み仲間のオヤジ連中なんですけど、お腹ぽんぽこりんの、私も含めてさらば青春世代のオヤジたちにも浸透していたんでありますよ。ちょっと驚きでした。
え!? なんで美肌? おまあら、美肌とか似合わんぞ!
始まりは居酒屋の大テーブルでの会話でありました。
8人がけの楕円テーブルもコロナ禍では6つの椅子に減らされていまして、アクリルの仕切りがごしゃごしゃと並べられていますね。
もう慣れたとはいえ、気持ち的に窮屈な空間なんですけど、カウンターが半端に埋まっていましたんで、顔馴染みのオヤジ3人が大テーブルへ案内されたんでありました。順々にね。
ま、それぞれ適当に、いつも通りやっておりましてね、何とかいう顔に塗るローションの話を始めたヤツがいたんです。
「いやあ、顔、さわると分かるんですよ、すべすべって気持ちイイんだよね」
なにょお言うとんねん、なにょお。オヤジの肌がすべすべって、気持ち悪いわッ!
「あのね、男の方が化粧品の効きがイイっていうんだよね。ほら、これまで化粧品なんて使ってきてないから、お肌が自然なままなんで、もう、効いちゃうわけよ」
へええ、って、なあにがお肌じゃ! おまあの顔の肌艶とか、どうでもエエわ!
と、そこへ急にボトルキープしてある4合瓶を片手に、大テーブルの私の隣りに席を占めたミコちゃんが口を挟んできました。
「あのね、今、男性用化粧品っていうの、女子連中がとっても興味持って研究してんのよ」
は?
「なんかね、詳しいことなんて誰も知らないし、成分なんて同じようなもんなんだけど、その配分っていうか、調合が違うんだとしたら、実は自分に合ってるのが男性化粧品の方にあるんじゃないかって」
ふううん。そですか。
オヤジたち3人はただ頷いて聞いております。
「でもね、新発見があんのよ」
ふううん、はいはい。って感じでイマイチ話にのれない私1人と、興味津々で身を乗り出しているお肌オヤジ2人。
「市販の化粧品とか、エステなんかよりね、温泉行くのが一番イイんだって」
ほほお。「温泉」っていう単語を聞いたのも久しぶりな気がします。
もちろん、コロナ禍でも行っている人は居るんでしょうけれど、酒呑みたちの間では、近場であったとしても温泉まで出かけるアクティブなヤツって、あんまり居ません。
ま、私の周りの酒呑みたちの間でのことですけどね。巣穴から出ない酒呑みたち。
で、話はスマホで調べながらの温泉とお肌の関係になりましたんで、斜めに聞いていたんでありますが、「日本三大美肌の湯」っていうのと「日本三大美人の湯」っていうのがあるんだそうですね。
ま、どんなものにも「日本三大」っていうのはあるんだと思いますが、「美肌」は分かるとして「美人」って、なんやねん。美肌と美人と同じ意味なんでしょうか。
それにそんなのって誰が決めてんねん!?
っていうことで、はい、いつも通り、ちょっと調べてみました。後付ですけどね。
「日本三大美肌の湯」っていうのは、実になんとも明確な出自が分かっているんでありました。
まずもって「日本三大美肌の湯」を定義したのは、「温泉旅行博士」の藤田聡っていう1964年生まれの温泉評論家だそうです。明確です。
温泉評論家っていう肩書に真実味を感じるかどうかは別にして、まあ、そういう存在はあるんだろうなあって思いますけど、温泉旅行博士って、なに? って思いますよね。聞いたことないです。
そうしたらですね、JTB主宰の「第1回温泉旅行検定試験」っていうのがあって、それで第1位、検定協会から認定を受けた博士なんだそうです。
へええ、です。ま、イイじゃないですか。一応客観的な評価を受けている温泉マニアってことなんでしょうからね。
その藤田温泉博士が定義しているのが「日本三大美肌の湯」
の3つです。
藤田温泉博士が実体験から定義しているんでしょうから、実際に美肌効果があるんでしょうね。
嬉野温泉は聞いたことがあります。
古代、神功皇后がこの地で傷付いた白鶴を見かけて気にかけていたところ、湯あみをして元気に飛び立っていって「あな、うれしや」と宣って、それが嬉野の名前の由来で、湯あみした河原に沸いていたのが嬉野温泉の始まりってことですよね。
嬉野っていう名前、素晴らしいですよね。前々から行ってみたい温泉ではあるんですけど、残念ながら行ったことないんですねえ。佐賀県ですねえ。
ここの名物「嬉野温泉湯どうふ」っていうのも食べてみたいです。
温泉卵っていうのはコンビニでも売っていますけど、温泉湯どうふって嬉野温泉だけじゃないでしょうか。
喜連川温泉っていうのも知ってます。
これは一時期、通勤電車の窓やら壁やらにに広告が貼ってあったからですね。
温泉の宣伝じゃなくって、たしか住宅販売の広告でしたね。
「きつれがわ」っていう読みが珍しいんで記憶していました。行ったことは、やっぱりないですねえ。
斐乃上温泉っていうのは、今回調べてみて初めて知りました。でも、温泉通には有名なんでしょう。
喜連川温泉は1981年、斐乃上温泉は1985年ごろの源泉湧出だそうで、「日本三大美肌の湯」のうち、嬉野温泉を除いては、現代に始まった温泉なんですね。
地域振興、いわゆる町おこしに成功した事例ってことになるんでしょうか。
ふるさと創生事業ってことで、各市町村に1億円が交付されたのは1988年、1989年のことでしたから、喜連川温泉も斐乃上温泉も、そうした資金に頼ることなく、独自に起こした事業ってことなわけで、成功して良かったですねえ。
一方「日本三大美人の湯」はっていいますと、こちらはずいぶん前からそう言われていますって感じで、出典はハッキリしませんね。って、まあ、日本三大は根拠がハッキリしない方が普通だと思いますけどね。
美肌の湯と共通している温泉はありませんね、美人の湯。まあ、美肌の湯の方が後付けで定義しているんでしょうから、美人の湯を避けた美肌の湯っていう結果なのかもですけど、島根県の出雲が共通していますよ。
で、マップで確かめてみますと、斐乃上温泉の住所は島根県仁多郡奥出雲町竹崎ってところで、湯の川温泉の方は島根県出雲市斐川町学頭っていう土地で、直線距離でも45キロメートルぐらい離れています。近くはないみたいですね。
湯の川温泉っていうのは、北海道函館市にも在って「名湯百選」に入っています。
湯の川っていう名前ですからね、他にもあるかもしれないですけどね。
なんにしても美人の湯の方は、3つとも初めて知りました。
美人の湯の名前は違和感なく読めますけど、美肌の湯の方は、ちょっとアタマをひねらないと読めませんね。そういう違いを感じますけど、お湯はどうなんでしょう。
まあね、美人の湯に入ったら容姿が変わるってわけでもないでしょうから、美肌も美人も同じ意味で使われているんでしょうね。
容姿が変わっちゃったらコワイです。
各地の温泉にもお湯の種類があるっていうのは、なんとなく知っていますけど、どんな成分がどんな効果をもたらしてくれるのかってイマイチ理解できていませんし、実際のところ、1カ所の温泉地でも、入る温泉によって成分が違っていたりすることがあるらしいですから、立て札とか読んで、ふむふむって入るのがイイんでしょうね。信じる者は救われる、です。
「単純泉」っていう温泉が日本では一番多いんだそうですが、成分に決まりがあるわけじゃなくって、ミネラル泉ってことみたいですね。
無味無臭、肌への刺激が強くないんで、リハビリ湯治なんかに向いている温泉。
二番目に多いのが「塩化物泉」
身体の芯から温まるっていうのがこれですね。湯上り肌もしっとり。
日本の温泉の中には0.6%しかなくって、貴重なのが「二酸化炭素泉」
ぬるめのお湯が多くて、飲む温泉っていうのはほとんどこれだそうです。
末梢神経を拡張する働きがあって、身体中の循環が良くなるんだそうです。むくみ解消の温泉。
そして「炭酸水素塩泉」っていうのが、美肌、美人の湯の正体。
入るだけで不要な角質、毛穴の汚れを取り除いてくれるので、肌がすべすべ、とっても清潔! ってことみたいです。
こちらも飲む温泉で、生活習慣病にイイんだそうで、美肌、美人っていうか、清潔、健康の湯ってことなんですね。
ミコちゃんが言っていた、化粧品より温泉っていうのは、この「炭酸水素塩泉」のことなんでしょねえ。
ケミカルピーリングで毛穴の汚れや不要な角質を取るっていうより、天然成分によって同じ効果を得た方が肌に優しいってことなんでしょう。
ただ、注意しないといけないのが、角質が取り除かれた肌は、水分が蒸発しやすくなっているので、湯上りの気持ち良さそのままにしておくと乾燥してしまうってことだそうです。
湯上り肌には保湿剤を塗ってあげるのがよろしいそうですよ。
保湿剤とかなんなのか知りませんけど、そういうことなんで、美人の湯、美肌の湯っていうカテゴリで、日本三大に選ばれてなくたって、どういうお湯なのかを調べていけば、美肌になれることは間違いない「炭酸水素塩泉」です。
「重炭酸土類泉」と「重層泉」の2種類があるんだそうです。
重曹? 清潔になり過ぎちゃうんじゃない? んなこたあ、ないんでしょうけどね。
ミコちゃんから温泉の効果を聞いていた美肌願望オヤジ2人は、上目遣いになって温泉行を考えているみたいでしたけど、おまあらみたいなオヤジどもは、バッチイもので出来上がってんだから、重曹泉に入って、存在自体無くなってしまえ!
とは言いませんでしたよ。はい。
だっていろいろ知ったのは、帰ってきて調べたからですもんねえ。居酒屋で言ってやりたかったことは間違いありませんけれどもねえ。お肌オヤジたちにはちっとも共感できないんであります。
個人的には、お肌より、その温泉場の料理とか、酒とか、そっちを調べてから、そっと1人旅で行ってみたいのでありますよねえ。
温泉飲むのもイイですけど、やっぱりねえ、地酒でしょ。地焼酎でしょ。地ビールでしょねえ。
でもまた、コロナ、増えてきた感じで、ヤアねえ。でっす。
誰にも気兼ねなく、ゆったりとした気分で、温泉、行きたいっすねえ。