ウキウキ呑もう! ニコニコ食べよう!

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【中華豆腐ごはん】自分だけで食べるときのちょいメシ お茶漬けに飽きたらコレ お勧めです

<木綿豆腐 絹ごし でもオッケーですが 充填豆腐がダントツで簡単 旨い 飽きません>

「アリちゃん」と出会ったのは、お昼にみんなで見る定番となっていたテレビ番組「笑っていいとも 森田一義アワー」が終わった年でしたので、2014年のことでした。


休日の昼は、ほぼ中華で、行く町中華の店もほぼ決まっていました。
中国人夫婦のやっている店で、休日は昼の仕込み、休憩時間をとらない営業方式。ずっとやってる。


朝遅く、ぼんやり起きて、遅いブランチスタイルだった私には重宝する町中華でした。


かなり長いこと通っておりまして、店の夫婦とは顔馴染。二人とも大連の人。日本語堪能。


カウンターに座って、きょうは何にしようかなあ、とぼんやり考えていると、


「担々麺、新しいの始めるよ。食べてみて」


と言われたりして、日本人サンプルとして「試食」するようなお付き合いも始まっていました。


「黒ゴマね、どう?」
灰色がかったスープにラー油が筋状に浮いています。
「ん~。旨いけど、キレがないね」
「キレ? なにそれ、キレ、なんのもの?」


首をひねるぽっちゃりしたオカミさんの後ろから、ツインテール若い女の子が顔を出して、中国語で何か、早口でオカミさんに言いました。


と、オカミさんは厨房へ入って行って、旦那となにやらワアワア話し始めました。

 


中国人としては、ごく普通の会話なのかもしれませんが、どうもね、なんかケンカしているみたいに聞こえますよね。中国人、みんな元気!
でもまあ、夫婦の「元気な怒鳴り合い」はいつものことですので、そのまま「黒ゴマ担々麺」を啜っていました。


と、そのツインテールの女の子が隣りに座って、
「あまり甘くないイイでしょ」
とニッコリします。


「うん、そだねえ」
「それ、もう食べないイイよ」


ん~。そうは言ってもねエ。もったいないでしょ。と思っていると、オカミさん。小どんぶりを持って出てきました。


「スーラの言うの、こっちはどう?」


スープの色が少しばかり薄くなって、ラー油と黒ごまが浮いています。


「ああ、こっちの方がイイね。旨いよ」
「これアタシ考えたよ。黒ゴマ、甘くしないね。ぜったいおいしでしょ」

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と、能天気に自信たっぷりの女の子が「アリちゃん」だったのでした。
オカミさんの姪っ子さんらしいです。


中国で日系企業に就職したいらしいんですが、面接で落ちたので日本を研究する目的でやって来た。らしい。
日本を研究するなんていうと仰々しい感じですが、具体的に何をしているかといえば、町中華のお手伝い。なんだそうでした。


その後も変わらず休日の午後はその町中華です。
二時過ぎ。客足の途絶えた時間帯で、店の夫婦とアリちゃんと一緒に食事をすることもありました。


一緒にとはいっても、私はカウンター、一家はテーブルで。そんな感じの店です。


担々麺は人気メニューになって「白」「黒」に加えて「赤」というのもやっていましたね。
「赤」は、ナントカいう中華味噌の色だそうですが、担々麺としては不思議な味でした。


しばらくすると、客の多くが「アリちゃん」と彼女を呼んでいることに気付きました。


ん? スーラ、とか聞いたような。
で、聞いてみると、


「あたしイーズよ。アリちゃんね」


なんのこっちゃ? と思ったんですが、その場での説明を聞いても良く分からない。つまりアリちゃんの日本語では理解できませんでした。
ので、帰ってから調べてみました。


2010年ごろから中国では、大学を卒業しても就職できず、非正規労働せざるを得ない若者が大量に居て、郊外の安アパートでルームシェアして暮らしているという社会現象が起きていたんだそうです。


真面目に働いているけれど、群れて暮らすしかない弱い集団、ということで「アリ族」と呼ばれていたということでした。イーズ、蟻。


アリちゃんは、自分がアリ族であると自覚していて、なんとかその環境から脱却する目的で日本に来たってことなんでしょう。


日本では店の近くのワンルームに住んでいるらしかったですが、
「日本イイね。楽しいよ」
といつもニコニコのアリちゃんなのでした。


自分から言ってたんでしょうね「あたし、アリちゃんよ」たぶん。


いつでもアリちゃんが店に居たわけではありませんが、テーブルで食事をとっている時のアリちゃんは、いつも同じものを食べているように見えました。しかもなんだか見たことのないようなごはん。


「それ、なに?」
「豆腐」


ほほう! それが中華豆腐ごはんとのファーストコンタクト。

 


茶碗に盛ったご飯の上に豆腐をポンッと乗っけて、しょう油をかけて、崩しながらスプーンで食べる。


「オイシよ。あたし豆腐大好きね。日本の豆腐イイよ」


で、後日、自分でもやってみました。カンターン。でもイケます。


日本のパックごはんに日本のパック豆腐、日本のしょう油ですが、アリちゃんのインパクトが強いので、自分なりに「中華豆腐ごはん」と呼んでいました。自分だけね。


そんでもって何回かやっているうちに、ちょっとアレンジし始めました。
ちょっとじゃないかもしれません。


アリちゃんバージョンとの違い、その1。


ごはんはパックごはんです。「麦ごはん」「金芽米」とかいろいろ。でもまあ、これは違いというほどの差は無いと考えて良さそうですよね。


その2。
アリちゃんバージョンは店で出す「麻婆豆腐」用の木綿豆腐ですが、それをスーパーで売っている「充填豆腐」にしてみました。しかも「温奴(おんやっこ)」です。
あったかいごはんに、あったかい豆腐。


その3。
アリちゃんバージョンは木綿豆腐にしょう油、というシンプルイズベストでしたが、薬味を乗っけてみました。
長ネギのみじん切り。茗荷のみじん切り。ガリのみじん切り。岩塩。ごま油。出汁しょう油


いろいろやってみました。取り合わせは様々です。
薬味の組み合わせでガラリと風味が変わります。


で、家から少し遠出をしますと、自家製豆腐の販売店が何店かありまして、そこの「高級豆腐」でもやってみましたが、コスパを考えないとしても、近くのスーパーで売っている「充填豆腐」がベストだと思いますね。


「温奴」っていうのは、私のアイディアではなく、ずいぶん前に下町の屋台で出されていた酒のアテなんです。


今はもう、屋台の行列を見ることは出来ませんが、昭和の時代には亀有や、青砥、立花辺りに屋台呑み屋がずらずらと並んだ光景が展開されていたんですね。


祭りに出る屋台の基地があった土地の名物、みたいなものだったですね。
センベロ族が大挙してやって来ます。


酒のアテに「わたあめ」とか「チョコバナナ」とか、ア・ホ・カ! な屋台もありましたが、なかなか人気があって、いつも賑わっていたものです。


おでん、お好み焼き、イカ焼きとかいろんな屋台が出ていて、アテは、どこの屋台から買ってきてもオッケーで、酒もそのたびごとの清算ですので、屋台を次々に渡り歩く人も居ましたね。


わたあめで熱燗っていう「両刀使い」も居たりして、口の周りをわたあめのピンク色に染めて、コップ酒。うわああ! ってオヤジもたまに居ました。


その中の、焼きそば屋台に通っていたんですが、そこのオヤジがやっていたんです。「温奴」


小さな充填豆腐のパックをそのまま鍋のお湯に入れて、パックごと皿に乗せて「ほいっ」と出します。


そこに置いてあるしょう油をかけて、割りばしでグズグズにしながら食べる。
パックから皿に出して食べる人も居れば、パックのまま食べる人も居ます。


メニューの名前は「白プリン」


センス、悪~! なんですが、これが旨かったんですね。充填豆腐。


プルンプルンなんです。あったかい白プリン。


で、それを思い出して、さらにごはんに乗っけるというアレンジをして、アリちゃんにも食べてもらいました。


遅いお昼は食べ終わった後のオヤツ的な「中華豆腐ごはん」


充填豆腐の温奴に、長ネギ、ガリのみじん切り。ごまラー油、出汁しょう油バージョン。
町中華に個人調味料持ち込みです。


「これトーフ違うでしょ」


といって最初は恐る恐るだったアリちゃん。口に入れてパクパク、味わうと、


「ん~! んん~っ!」


しっかり呑み込んで、


「これイイね。オイシよ。でもこれトーフないでしょ」


最後まで納得しないアリちゃんでしたが、パックを見て、とっても不思議そうにしていました。


ごはんに豆腐を乗せて食べるというのは、中国人にとってさして珍しい食べ方ではないようで、店の夫婦も気に入ってくれました。


その後、アリちゃんのアレンジとして、ザーサイとメンマのみじん切り乗っけ、酢醤油ラー油バージョンを御馳走してもらいました。
むふふ、これはまさしく「中華豆腐ごはん」という味でした。


それからしばらくして、アリちゃんが中国へ帰ることになって、なぜだか店の夫婦も帰国という運びになって、もうその町中華は無くなってしまったんですが、アリちゃんはちゃんと就職して、アリ族から脱却しただろうなあと、祈念しながら思い出したりします。

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中国と日本の交流は、民間レベルとしてはですが、こんな感じで、盛んとは言えないまでもけっこうフレンドリーに、自然な感じで行われているんじゃないでしょうか。


「中華豆腐ごはん?」「充填豆腐?」「温奴?」なに?
と思う方も少なくないかもしれませんが、実に簡単です。


「充填豆腐」に関しては、おそらく、知らない、といいながら既に経験している人がほとんだと思います。


どこのスーパーでも普通に並べて売っていますよ。

いつも買っている豆腐のパッケージを確認してみてください。案外、いつも買っているパックに「充填豆腐」と書いてあるかもしれませんよ。


水にさらさずに作った豆腐で、長持ちするのが特徴です。個食用で小さめのものも多いです。


これをパックごと湯煎するだけです。水からでも、お湯を沸かしてからでも、鍋の中にトプンと入れる。
ザッツ・イット!


水に入れてから火をつける場合は、沸騰する前、湯気が立ちのぼったぐらいが丁度好い感じです。
めっちゃ柔らかくなります。ぷるぷるです。


テレワークだとか、外出自粛だとかで、家で食事する機会が増えたという人も多いかと思います。


いつもは、家族のために朝昼晩、ごはんを作っている人も、たまに独りで食べるってこともありますよね。
自分だけで食べるために調理するのは、なんだかきょうは面倒だな、ってことで、ササっと済ませたいことも少なくないんじゃないでしょうか。


そんな人は自分なりにいろいろ工夫していることと思います。独りめし。

 


で、結局、お茶漬け、とかになっているかもですが、まだまだ続くコロナ禍の自粛生活です。バリエーションを増やしておくのは悪くないです。


すぐに簡単にできますので、試してみてはいかがでしょうか「中華豆腐ごはん」


後片付けも省エネですよンッ!


酒のアテでは「白プリン」お勧めします。薬味を工夫してね。