< 電気ねえ エネルギーではあるけど液体っていう共通項がなくなっちゃったら 意味不明でしょねえ >
誰が言い始めたのか分かりませんが、酒は、自分が生きて、動くためのエネルギーなんだってことなんでしょうけど「酒は人生のガソリン」なんて言葉がありますよね。
そんなにしょっちゅう聞く言葉じゃないですけど、ま、酒呑みの常套句、なんとなく言い訳めいて聞こえなくもないんですよね。
ところで、人には2種類あります。大人になって、酒呑みになる人と、そうならない人です。
上戸、下戸。
これはこれで不思議だなあって思いますけど、自分自身のことを考えてみますと、なんで飽きもせずに毎日まいにち酒を呑むのか、これまた不思議な感じがします。
でも、あれですね、ガソリンと思って呑んでいるわけじゃないですね。
がんばらなきゃいけないとか、耐えなきゃいけない。パワーが、ガソリンが必要だって感じるそういうシチュエーション、人生のこととか、そんなに考えませんよ。
毎晩、能天気に酒を呑んでおります。ガソリンとしてじゃなくって。
「お酒は人生のガソリンなんですよね」
っていうセリフをついこの前聞いて、しかもそんなことを言ったのが24歳っていう若い女の子だったんで、ちょっと考えちゃったわけです。
焼酎バーのカウンターなんですけどね、カウンターの空席は1つしかなくって、必然的にその女の子の隣りに案内されて座ったわけです。
いかにも若いっていう雰囲気で、リクルートスーツって感じの濃いめの紺のスーツ姿、初めて見る人ですね。
女の子の反対側の隣りも初めてみる壮年の女性でした。
女性の独り呑みっていうのも最近では珍しくないですけど、若い人たちはたいてい3、4人ぐらいのグループで来ている印象です。
その女の子がカウンターに独りっていっても、待ち合わせの相手が遅れているだけなのかもですけどね。
いつものごとく両隣に軽く会釈だけして座りました。
女将さんがすぐにおしぼりを持って来てくれます。
「はい。いらっしゃいませ。あのね、いちごサワー始めたんだけど、呑んでみる? 甘くないですよ。でも、やっぱりサワーなんて呑まない?」
甘くないいちごサワー?
「ほら、お隣りのコが呑んでるやつよ。初めてのお客さんなんだけど、勧めたらチャレンジしてみるって、ね」
「はい。あたし今、お酒を勉強中なんですけど、これ、いちごサワーおいしいと思います」
ん~、そですか。そんな堅苦しくかまえて勉強するようなもんじゃないような気が。
なにかお取込み中な事情でもあるんでしょかねえ。
めっちゃハキハキした、よく通る声なんですねえ。
いちごサワーとかいったら、赤いカキ氷用のシロップのようなんで割ったやつかなって思ったんですけど、そのグラスを見たらですね、生のいちごを縦半分に切ったのがワシャワシャと入っていて、透明なんでした。
なるほど、甘くはなさそうです。
「キンミヤと炭酸水」
って女将さんが説明してくれました。そして、その女の子に、
「こちら、ぱうすさん。うちのお店で最上級の酒呑みさんだから、いろいろ教えてもらったら?」
ええ~!? どういうフリやねん! って思いながら首をかしげていたときに、その女の子が言ったんですよね。
「あたし思うんです。お酒は人生のガソリンなんですよね」
ふううん。そんなセリフ、どこで覚えた? ってちびまる子ちゃんのコマーシャルを思い出しましたけど、女将さんが、
「こちらね、24になったばっかりで、独りでお酒を呑めるようになる決意をしたんですって。今晩が独り呑みデビュー」
はあ、それはそれは、けっこうなことで。なのかな?
「お酒に強くなるには、なにを呑むのがいいですか?」
ん~。なんで酒に強くなりたいとか思うんでしょう。とか考えていたら、反対隣りの壮年女性が低音ボイスで、
「そんなね、無理に強くならなくたってイイのよ」
そだそだ、激しく同意。
「ほどほどに呑むっていうのが、だんだんにできるようになってくるから」
女の子はその女性の顔を見ながら何回も頷いています。
「それ、3杯目でしょ。きょうのところはそれぐらいにして、悪いことは言わないからもう帰りなさい」
カッコイイ~!
その女性も初めての人だったんですけど、ま、こういう女性の酒呑みもいて、なんだか安心します。
女将さんがすかさず、
「最後にいちご食べるとスッキリするわよ」
って、串を渡してあげますね。
ほほう、串ってとこがナイスですね。
酒はガソリンの女の子が帰った後、その壮年女性も軽く会釈をして帰っていきました。
女将さんに聞くと、壮年女性の方はたまに来ているお客さんで、生ビールオンリーだそうでした。
女性が独りで、構えずにいろんな呑み屋さんに入れるようになってきたのは、ああいう女性たちが切り開いてきた道なんでしょうね。
酒を呑むのに気を張るっていうのは、やっぱり、どこか違いますもんね。
24歳の女の子。またそのうち、どこかのお店で会う機会があるかもですけど、そのときには、ガソリンを必要としていない気持ちであられることを。
普通に社会生活を送っていて何の問題もないんだけど、本人が気づいていないアルコール依存を「高機能アルコール依存症」だとかいう説を唱えている向きもあります。海外の方ですけど。
高機能って、なんでしょ? 訳し方がウマクない?
酒との付き合い方ってそこまで神経質に考える必要なんてないように思いますけどね。
キッチンドランカーだとか、一時期盛んに報道されてましたけど、あれ、どうなったんでしょう。
もうそういう人がいなくなったってことなんでしょうか。
そういう女性たちも外へでるようになって、キッチンから解放されたってことなんでしょうか。
なんで酒を呑むのかっていうと、酒を呑んで脳をマヒさせてストレスから逃れるのが目的、とか、そういう解釈もありますけど、それとは違った科学的なメカニズムも解明されているんですよね。
人が酒を呑むのは楽しくなるから、気持ち良くなるからっていうことです。
そうだからこそ、疲れたなって思った時、なんだかなあっていう気持ちになった時、酒を呑むんでしょうね。
当たり前っていえば、ごく当たり前のこと。
一日の〆として、お店でも、部屋の中でも、ふううって深く息をしてから酒を口に運ぶ。
充足、ってやつでしょうかね。
仲間とワイワイやるのもイイですけど、ま、オトナになれば独りで、っていう方が落ち着くような気がします。
24歳のガソリン少女も、なんかそういう独りで呑んでいる女性の姿を見て、一種、あこがれのような感覚を持ったのかもしれませんですね。
酒を呑むと、なんで楽しく、気持ち良くなるのか。
酒が身体の中に入ると、脳内にドーパミンが分泌されるっていうことが確認されているんだそうです。
ドーパミン、楽しさを感じる神経伝達物質ですね。
さらには、不安を取り除いたり気持ちを落ち着かせるセロトニンの分泌も確認されているってことですよ。
なので酒に強い必要なんてないんです。カッコイイ壮年女性がおっしゃるとおりでございますよ。
ほどほどに、調子に乗り過ぎず、ちゃんと自分を保ったままドーパミンとセロトニンの心地よさに浸れる「技術」っていうふうに考えると、徐々に修得していくものなのかもです。
酒に限らず、なにごとも適切適度、イイ塩梅っていうのが大事でしょねえ。
酒呑みで有名な「白居易(772~846)」っていう中国の詩人も、呑んで暴れるようなことはなくって、適度に酔うってことを実践していたらしいです。
適意っていう詩があるんですね。意に適うってことですから、思いのままにってことなんでしょう。
その最後の方。
朝睡足始起
(ちょうすいたりてはじめておき)
夜酌酔即休
(やしゃくよえばすなわちやすむ)
人心不過適
(じんしんはてきなるにすぎず)
適外復何求
(てきがいにまたなにをかもとめん)
こうした生活って、なかなか実践は難しい感じかもですけど、
充分な睡眠をとって蒲団から出て
晩酌をして酔ったらそのまま横になる
人の気持ちは思いのままなのが一番
自由な気持ちの他に何を求めるのか
ってなことでしょうね。
そういえば最近「晩酌」っていう言葉もあんまり聞きませんね。
中国では「夜酌」って言うんですね。今でもそうなのかどうかは分かりませんが。
白居易、この詩は独酌っぽいですね。
酒呑みって、独りでドーパミンとセロトニンを感じ取れるようになれれば一丁前ってことなように思います。
酒は吞むべし、呑まれるべからず。って、まさにね、格言。
つかず離れずの友人として付き合っていければイイですよね。
酒はガソリンでも、電気でもないのであります。
wakuwaku-nikopaku.hatenablog.com
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