< ぼくらはみんな生きている みんな仲間だ 酔っぱらいなんだ >
21世紀に入ったあたりから減ってきたように感じるのが「昼の酔っぱらい」でしょか。
もちろん24時間営業の居酒屋チェーンもありますし、東京ですと錦糸町、赤羽、西荻窪だとかには朝からやっている人気の焼き鳥屋さんも健在ではあるんですけどね。
そういう「呑み屋さん」じゃなくって、町中華とかファミレスで、つまりアルコールも置いてはいるけれど呑み屋さんじゃない店で、お昼どきからデキアガッチャッテいる酔っぱらいね。見かけません。
昭和の町中華では普通にお昼を食べに来て、水代わりのつもりなのか、ビールの大ビンを呑んでいる人って珍しくなかったです。いや、ホントに。
作業着姿の人もスーツ姿の人も。み~んな呑んでいたもんであります。
世代なのか時代なのか、そういう酒呑みも令和の日本ではすっかり見かけなくなりました。酔っぱらいじゃないですけどね。その程度に抑えて呑んでいる。
まあね、ガテン系であれオフィスワーク系であれ、午後からも仕事があるし、お昼から酔っぱらってちゃ勤まりませんでしょ、ってことなのかもですけどね。
でもね、いくら昔はおおらかだったとはいっても、酒のニオイってのもありますし、仕事の現場で飲酒状態が許容されていたとは思えませんし、もしかすると、われわれ日本人のアルコール消化能力がだんだん弱くなってきている、ってことがあったりするんでしょうか。
昔の人たちは多少呑んでも現場仕事をこなすのに支障はなかった、んでしょかねえ。酒のニオイはしてもです。
ま、その辺のところはよく分かりませんが、とにかく昼からの酒呑みはほぼ見かけなくなりましたです。
でもですね、ついこの前なんですけど、いましたねえ、久しぶりに昼どきの酔っぱらいをお見かけしたんであります。珍しいです。
東京の郊外、冬晴れの陽射しが燦々と降り注いでいるファミリーレストラン。
お昼少し前、冬の低い太陽がだいぶ上がってきたころ合いで、大通りに面した大きな窓をまぶしさを避けるために塞いでいたロールカーテンをお店の人が次々に開け放っているタイミングでした。
モーニングもやっている店で、朝のうちは直射日光がその大きな窓から入って来てまぶしいんでしょね。
一番奥のシートに分厚い私服のセーターを着た中年オヤジ2人組が、わやわやとニギヤカにおらせられましたです。
「んはははあ、バッカじゃねえの~」
ほほう、やってますねえって思いながら、窓際のシートに席を占めると水を持って来てくれた店長さんが、顔をしかめながら言います。
「すみませ~ん。声を抑えてくれるようにお願いしてるんですけど……」
はいはい~。
BGMも鳴っているんですけど、2人組のノイズに押されてますね。
でもまあ、自分も酒呑みですから、はい、モーマンタイです。
明るい酔っぱらいは大声だけで非難しちゃいけませんでしょ。
ま、お店側としてみれば、うちは居酒屋さんじゃなくってファミリーレストランなんだけどなあ、っていう気持ちになるっていうのもね、分かります。
酔っぱらいたち、当人たちは気持ちイイんでしょうけどねえ。
24時間営業のファミリーレストラン。アルコール類も豊富に置いています。メニューに載せている以上、断るわけにもいきませんでしょうねえ。
2人組は夜中の2時ごろから呑んでいるんだそうで、なかなかのツワモノたち、みたいです。
体力がないと10時間近く呑み続けられませんもんね。
他には、酔っぱらい2人組の対角線上の遠いシートで若いカップルが静かにお食事中でした。
そのカップルにも取っ払いのだみ声は聞こえているでしょねえ。
「うっはあ、ほらカーテン開いたら世の中明るいんだよ。この朝陽を浴びれば何でも明るく行けるだろっつの」
「朝じゃねえよ、もう昼だよ」
「どっちだってイイんだよ、太陽さえ浴びれば」
「そろそろ昼めし食って帰るか。酔っぱらいは迷惑だから」
「酔っぱらいはウルサイってか? 最近は酒も呑めない軟弱なやつが多過ぎんだよなあ」
「だから、それがウルサイっつんだよ」
「なに言ってんだ。世の中に酔っぱらいほどエレガントな人間はいないんだぞ。お前、全然分かってないだろ。地球人類の中で最もエレガントな人種。それが酔っぱらいだっつんだよ」
んはは。こういうのを「怪気炎」って言うんでしょねえ。
調子がよすぎて、真実味がないように聞こえる、盛んな意気。
与太を飛ばす、なんて言い方もありますね。
酔っぱらいのタイプとして声が大きくなっちゃう人って、いるんですよね。
店長さんが2人組のテーブルへ向かって急ぎ足。
と、
「みなさん、すみませ~ん。酔っぱらいはもう帰りま~す」
店長さんに何事か言われる前に、自主規制、自己判断。
かなり困ったやつらですけど、アルコールが抜ければイイヤツ、なのかもです。自覚してるっていうところが救われる、のかなん。それともかえって始末が悪いのかなん。
店長さんが困った笑顔を見せながら引き上げて来た、と思った瞬間、ロールカーテンを開け放った大きな窓に、
「ズドーンッ!」
酔っぱらいの大声を吹き飛ばすには充分な衝撃音でした。
何事!?
窓ガラスは割れていませんが、何かがぶつかった跡がハッキリついています。
店長さんが落ち着いた声でカップルと私に教えてくれました。
「お騒がせしました。今の季節、たまにあるんですけど、スズメの仲間らしいんですよ。衝突してくるんです」
お呼びでない酔っぱらいが店長さんに応えます。
「ビックラしたあ。スズメの酔っぱらい運転かよお。あ、酔っぱらい飛行か。スズメだから」
「ばあか、スズメが酒呑むかよ」
とかなんとか言いながら、さすがの2人組もスズメの衝突に少しは正気付いたのか、あとは口をつぐんで、フラフラと帰っていきました。
「ありがとうどざいましたあ」
店長さんが戻って来て説明の続きをしてくれました。
「レンジャクだろうってことなんですけど、死んじゃってるかもしれないんですよね。ホントに酔っぱらって、思いっきりぶつかって来るのかもしれないんだそうです」
ここ5年間で3度経験しているんだそうです。
2回目の時の客席に動物病院の先生家族がいて、野鳥は酒を呑んで酔っぱらうことがあるって教えてくれたんだそうです。
野鳥が酔っぱらうことを目的として酒を吞むわけじゃなさそうですけど、後で調べてみますと、発酵してアルコールを含んだ状態になった果実を食べてしまって酔っぱらうんだそうですね。
どこか近くに冬になっても実が落ちずに、発酵してしまっている樹があるんだろう、っていうことらしいです。
へええ、って思ってですね、さらに調べてみましたら、酔っぱらい鳥って、世界中にけっこういるみたいなんですよね。
野鳥にエサをあげるエサ台に果物を置いて、それに、ウイスキーとかビールとかをかけると、あっという間にいろいろな野鳥が集まって来るっていう記事もありました。
鳥って目だけじゃなくって鼻も効くんですかね。
ん~。だとすると、偶然、発酵してアルコール分を含んだ樹の実を食べちゃって酔っぱらうってことじゃなくって、アルコールを求めて食べているってことなんでしょうか。
酒呑みスズメとか、酒好きレンジャクとか、酒呑み、酔っぱらいは人間だけじゃないみたいですねえ。
仲間意識が広がりますねえ。地球の生き物、みな兄弟!
たくさんのコマドリがいるんだそうですけれど、冬場のエサはいろんな種類のベリー。
そのベリーが枝から落ちずに発行してしまってアルコールを含むようになる。
そうなると、ついばむコマドリたちが酔っぱらっちゃう。酔っぱらいコマドリ、大量発生。
で、路上で寝ちゃう。
こんな寝方、鳥はしないですよね。
鳥たちは枝につかまったまま眠ります。器用です。
あれって、身体の左半分だけ眠るとか、右半分だけ眠るとか、そういう眠り方だから出来るらしいんですよね。
さらには、枝をつかんでいる爪はそのままの形で自動的にロックがかかる仕組みになっているんだそうで、落ちないってことなんですよね。
原初の頃から身を護るために進化させてきた鳥たちの眠り方。
それがねえ、路上で無防備に泥酔しちゃうんですねえ。
アメリカ、ミネソタ州では、コマドリだけじゃなくって、北米に多くいるヒメレンジャクっていう鳥も、大勢で千鳥足になっているのが目撃されたり、方向感覚を失って壁やガラスに衝突する「事故」を起こしているんだそうです。
連雀っていう名前の通り、大きな群れで暮らしているヒメレンジャク。酔っぱらう時にもみんなで一斉に酔っぱらうってことで、方向感覚を失っちゃう「事故」って、地元の人は慣れっこになっているのかもですけど、なんか凄惨な光景が浮かんできちゃいますねえ。
言ってみれば「空飛ぶ酔っぱらい」ですからねえ、当人たちの生命も、ヤバイ、んでしょねえ。
旅客機のパイロットたちも、フライトの何時間か前にはアルコール摂取しちゃダメよ、っていう規則が作られたニュース、ずいぶん前にやってましたです。
鳥、ヒメレンジャクたちはお客さんを運んでいるわけじゃなくって、自分の命だけなんだからオッケー!? じゃないでしょねえ。
イギリスでは「空飛ぶ酔っぱらい」クロウタドリの大量激突死っていう事例も確認されているんだそうです。
日本ではどうなんでしょ。バードウォッチャーさん、「空飛ぶ酔っぱらい」観察したことあります?
中国で象の群れが、なんだか方向違いの旅に出ちゃって、農村部を北上。
途中で壺酒を呑んで、酔っぱらいツーリスト。っていうニュースもありましたねえ。
なにせ象ですもんねえ。酔っぱらってフラフラされたら、オオゴトですよ。
人間社会にしてみれば、ちょっとぶつかられちゃうだけで破壊行為です。
象は水だと思って壺酒を呑んだのか、あるいはやっぱり、本来的に酒吞みなのか。どうなんでしょね。
酒を呑む動物たちのなかで意外なのはハムスターでしょか。
ハムスターって「酒豪」らしいですよ。
飼っている人も少なくないと思うんですけど、アルコール、呑ませたりしているんでしょかね。
野生のハムスターはライグラスっていう植物の種や実を巣に貯める習性があって、冬の間にそれが巣の中で発酵。アルコール濃度の高い種や実になってしまう。
それを普通に食べて暮らすため、ほぼ例外なくハムスターたちは酒豪になる。っていうこと。
人間に例えていうと、度数40度以上のウイスキーだとかを1回で1.5リットル呑む。呑んじゃう。
ハムスター、とんでもないです。
でもってハムスターはそれぐらいじゃ酔っぱらわないんだそうです。
なんか特別な酵素だとかを持っているんでしょねえ。人間がまねしたら、まず間違いなく1回でオダブツ、ですね。
大酒呑みなのに酔っぱらわないハムスター。
でもまあ、のべつまくなしにアルコールを摂取しているわけじゃないですよね。
大酒呑んでハムスターホイール回したりなんかしていたら、アタマ、割れちゃいます。
ハムスター、大酒豪!
ところがもっとすごいヤツが地球にはいるですねえ。
マレーシアにいるハネオツパイっていうネズミぐらいの大きさの小型哺乳類。
彼らは酒が主食らしいんです。主食が酒ですよ。どういう生活やねん。
ハネオツバイの食べるのはブルタムっていう椰子の花。
その花にある蜜は、なんと3.8%の度数のアルコールを含んでいるんだそうです。
ハネオツバイはブルタムの花しか食べない。ので、主食は酒、ってことになって、年がら年中酔っぱらっている。
んじゃなくって、ちっとも酔っぱらわないんだそうです。
酒しか摂取しないのに、酔っぱらわない。
へええ、でっす。
なんか、ちゃんと研究したら、吞む前に飲む、とか、ホンキで効きそうな酔っぱらい防止薬とか、出来ちゃうんじゃないでしょうか。
恐竜時代の人間の祖先は、ネズミみたいな姿をした哺乳類だったんじゃないかって言う説がありますけど、このハネオツバイ、人間と共通の祖先をもっているかも、って言われているんだそうです。
っちゅうことはですよ、人類って2足歩行になって、しばらくしてから酒に出会ったんじゃなくって、もっとずっと前のネズミモドキの頃から酒呑みだった可能性がある、ってことじゃないでしょうか。
ご先祖さんに比べて現生人類は、なんと酒に弱くなってしまったことでしょうか。
でもあれですね、全く酔っぱらわないっていうのも、ツマンナイかもですよねえ。
地球は酔っぱらいだらけでイイんじゃないでしょうか。ダメ?
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