< 不老長寿っていうのと、不老不死っていう違いを考えてみる >
駅に向かって続く細長い商店街を歩いておりました。
野暮用があって出かけた郊外の街なんですけど、まあ、知り合いの住んでいる街なんで、ちょくちょく行きます。そんでまあ、その商店街の店も何軒かは知っているんですね。
その夜はもう9時ごろになっていたんで、その街で呑む予定はなくって、地元に帰ってからどこかに寄ろうかなって思って知人宅を出たんですが、商店街の入り口に差し掛かった辺りで、バラバラと降って来ちゃいました。
かなり強めになりましたんで、そこにあった立ち呑み屋さんに入って雨宿りです。
駅までは5、6分ぐらいなもんなんですが、スマホの天気図を確認すると、10分もすれば雨雲は通り過ぎそうな感じでしたんで、ま、そんなに濡れないぐらいの小降りになってから速足で歩きましょうっていう計画。
ビーチパラソルを樽の真ん中に刺してあるテーブルが4つあるだけの、半分通りにはみ出している店で、もう10年前ぐらいに出来た時から知ってはいましたが、入ったことのない店でした。
なんかね、立ったまま呑んだってイイんですけど、街なかに突然、派手な色のビーチパラソルっていう見た目に違和感、みたいなものを感じていてむしろ避けていた店だったんですね。
冷蔵庫が背中を向けて並んでいる中間にあるカウンターに行ってオーダー。
その場で代金を払って、吞みものを受け取る。アテを注文した場合は持ってきてくれるっていうシステムでした。
誰が何を注文したか、覚えてるってこと?
「うん、客でいっぱいになったとしても20人も並べないキャパだからね、誰が何を注文したか分かるよ」
インド、パキスタン系のお兄さんがニコニコと説明してくれました。
雨宿りですからね、軽く、生ビールを注文しました。
グラス生ビールですね。500円。でも、グラス、ちっちゃくないですかねえ。かなり小さい。
ま、いっか。
一番奥の樽には女性3人組がワイワイやっていたんですが、「そちらでお願いします」って、その隣りの樽を示されたんで、ハイハイ。隣りの樽へ。
ま、奥側は一応店の屋根もかかっているんで、派手なパラソルから外れても濡れないような位置なんですね。
土砂降りではないものの、けっこう降ってきているんでお兄さんは奥へ行けって言ったんでしょうかね。
ちっちゃいコップのビールを持ってその樽へ行って、目顔でオネエサンたちにご挨拶。
パラソルの下に裸電球が1つぶら下がっていて、それだけの照明ですね。
昭和ノスタルジーを演出ってことなんでしょうかね。
ん? オネエサンたちには外国の方も混じっているみたいですね、って思ったら、
「コンバワ。あたし、あなた、知ってるよ」
んあ? なんだこれ? 新手の勧誘セールスでしょか?
「あなたもあたし、知てるでしょ?」
ああ、そうねそうね、ってなんでやねん。知らんがな!
そうやって話しかけてきたオネエサンは、日本人っぽい顔立ちなんですけど、話し方からすると、って思っていたら、
「あたしたち、そこのカレー屋の人よ」
ん? カレー屋って、この通りに入って来る手前の? かなん?
たしかに何回かお昼を食べに入ったことはありますけど、オネエサン、いたっけ? とか首をひねっていると、
「あたし中国人。こっちはネパール、と、イラン人ね」
ええ~!? なんかそんなに国際色豊かな店だったの、あのインドカレー屋さん。
インド人はいないのかなん?
「あなたもあたし知てるでしょ。あたしボマージョだからニンキあるよ」
はあ、そですか。たしかに別嬪さんではありますけど、記憶にないですねえ。
にしても、ボマージョって、なんすか?
って聞こうかなって思ったところへ、1人の日本人男性が「呑んでるかあ」ってその樽へ参加してきましたんで、それ以上の話をすることもなく、もう1杯、ちっちゃいビールを呑んだ頃には雨はすっかり通り過ぎましたんで、パラソルから出て電車に乗って地元の居酒屋へ向かいました。
で、いつもの居酒屋でボマージョの話をしました。
「いくつぐらいの女の人?」
40代でしょかねえ。裸電球に照らされた表情じゃ、よく判りませんけどねえ。
「ポマードのことかな?」
ポマードで人気がある女の人って、どゆことやねん。
「例えば中国で人気のファッションとかにボマージョっていうのがあってさ」
とか、まあ、ボマージョを酒のアテにバカ話をしておりますと、女将さんが、
「それ、たぶん、ビマジョよ。アンチエイジングにお金かけてる中国美人」
ビマジョ? なにそれ?
って言ったら一斉攻撃を受けました。おみゃあさんは美魔女を知らんのか~!
知らんですよ。
でも、みんな知ってるんですか「美魔女」
ええ~!? 初耳です。美魔女。
ボマージョ、ビマージョ、美魔女。ふううん、そですか。美魔女ねえ。しかし、自分から言いますかねえ。
案外、50代ぐらいなのかもよ、ってことだったんですが、そういうアンチエイジング効果っていうのがあるんでしょうかねえ。裸電球効果もプラスしてってこと? いや、裸電球は関係ないでしょねえ。
で、バカ話は誰が美魔女かっていうトークになっていったんですけど、テレビを見ていないと、その誰それが名前は聞いたことがあっても、顔が思い浮かんできませんし、さっぱり分かりません。
スマホで美魔女の写真を見せてくれましたけど、たしかにね、60代とは思えないような美貌の方もいらっしゃいました。
みなさんオキレイでしたよ。美魔女ですからねえ。
しかしねえ、酒吞みオヤジたちがなんでそんなに美魔女情報に詳しいねん!?
なんだか不思議ですよ。
アンチエイジングって言われている現代の化学を自分にあてはめるんじゃなくって、それを実践している女性情報として認知しているわけですからね。ヘンナノ~。
完全に後付けで調べてみますと、アンチエイジングの方法やら薬品やらって「不老不死」「不老長寿」から来ているらしいんですね。
大雑把にひっくるめて言ってしまえば、錬金術の賜物っていうことなのかもですね。
ギルガメッシュ叙事詩とか、秦の始皇帝とかで言われているのは「不老不死」っていう表現です。
ギルガメッシュでは不老不死の薬草。
秦の始皇帝が求めたのは不老不死の飲み薬らしいんですけど、命令されて当時の中国錬金術師たちが作ったのが水銀入りの薬だったってされていて、それを服用したがために、始皇帝は自らの死を早めたんじゃないかってことなんですよね
日本へやって来たっていう徐福伝説が知られていますけど、始皇帝に命令されて徐福が求めていたのが不老不死の霊薬で、その霊薬のあるのが、蓬莱って言われた日本でしょう、っていう内容ですよね。
権力を手にすると、ずっと生きていたいって考えるようになるんでしょうかねえ。
権力の座にしがみついている人、少なくとも2人、いますよねえ、ま、関係ないですけど。
で、「不老不死」なんですけど、「不老」っていうのは、そのままアンチエイジングって訳しても良さそうな感じですよね。
いつまでも若々しくいたい。
古代から、人間の望みだったっていうことですねえ。
「不老不死」ってなると、若いまま、元気なまま死なない、ってこと。
ん~。これに比べてみますと「不老長寿」っていうのは、人間の願いとして、とっても分かる願い事のように捉えられそうです。
「長寿」ってことは、長生きってことで、限界があるってことを認めている上での願いですもんね。「不死」なんていう現実的じゃない死なない生命を望んでいるわけじゃないです。
「不老不死」から「不老長寿」って言い方に変えたのはいつ頃の誰なんでしょうね。
元から両方あったんでしょうか。
人魚の肉を食べて800年生きたっていう伝説の八百比丘尼は、800年っていうとんでもない時間を生きてはいますけれど、寿命はあったっていうことですよね。
浦島太郎も300年を龍宮城で過ごした辻褄を合わせるがごとく、玉手箱の魔法の煙で一気に寿命を迎えたようですしね。
玉手箱を開けなかったら、浦島太郎って何年生きたんでしょうね。
ヨーロッパには「アムリタ」とか「エリクサー」っていう不老不死薬酒伝説っていうのがあるそうなんですが、中国には「満殿香酒(マンディンシャンチュウ)」っていう伝説の不老不死薬酒が現存しているそうです。
しかも呑んだことありますよ、っていう話もあります。
小泉武夫っていう人が書いた「酒に謎あり」
1943年生まれの著者、小泉武夫さんは2022年現在ご存命みたいですが、中国人の寿命ってフツーですよね。
ま、高級酒なんでしょうから誰でも呑めるわけじゃないにしてもですね、満殿香酒を呑んだ中国の権力者が、何百年も生きたっていう話、聞かないですもんね。
っていいますか、現代に伝わる「不老不死」「不老長寿」の薬、薬酒に、リアルな効果を求める方がアホじゃ! ってことではあるんでしょうけどね。
あ、そっか。あの美魔女の中国人のオネエサン。満殿香酒、呑んでいるんでしょかねえ。
満殿香酒を呑むと、身体じゅうから麗しい香気が漂うってことらしいんですけど、立ち吞みの美魔女から香気は感じられませんでしたねえ。
美魔女っていう言葉を知った夜でした、
wakuwaku-nikopaku.hatenablog.com