< 酒呑みの言い訳ナンバーワン この名言の出どころは やっぱりあの国 >
コロナ禍のおうち時間。何をして過ごしておられますでしょうか。
酒ばっかり呑んでもいられないのが、ま、常識的ってもんでしょうかね。
読書、DVD、ゲームっていう過ごし方がトップ3なんだそうです。
この、読書、DVD、ゲームに共通して、3つのジャンルともそれぞれに人気の高いのが「三国志」ですね。
小説ではなんといっても、中国、明の時代に書かれたとされている「三国志演義」が有名ですね。訳書もいくつか出ています。
小説としては「反三国志演義」「私説三国志」「秘本三国志」「円卓三国志」っていうのも人気です。
三国志のマンガは山のようにあります。
横山光輝「三国志」が一番古いでしょうか。定番といってイイ作品ですね。
「蒼天航路」「天地を喰らう」「一騎当千」「鋼鉄三国志」「孔明のヨメ」「三国志艶義」だとか、シリアスなものからコミカルなものまで、ホントにたくさん出ています。
映画だと2020年暮れに公開された日本の映画「新解釈・三國志」評判はどうだったんでしょうかね。
「レッドクリフ」「曹操暗殺 三国志外伝」「三国志英傑伝 関羽」は中国映画でしたね。
多くの日本マンガはアニメにもなっています。
ゲームのジャンルではシミュレーション系がほとんどで、コーエーの「三國志シリーズ」がずっと人気ですよねえ。よくやりました。
2020年1月にはシリーズ14作目が発売されています。
パラメータだとかに新しい工夫がされているとはいえ、1テーマのゲームで14作って、なんだかもの凄いなあって思います。
シリーズ1作目が発売されたのが1985年の12月だそうですから、かれこれ36年。
小学4年生で三國志のゲームをやり始めた人が、今や46歳、もうじき50歳。
ん~。これですね、ずっと「三國志シリーズ」を追っかけている人って少なくないみたいですよ。
中国以外では、三国志好きの国って日本だけじゃないんでしょうかね。パチンコにもあるらしいですからね、三国志。どんなんか知らんけど。
そもそもの「三国志演義」が「劉備玄徳」を主人公とするような構成だったせいもあってか、日本での三国志人気はそのまま劉備人気となっているようなところがあります。
魏の曹操はワルモノですね。
劉備玄徳の人気の背景となっていることの1つに、劉備は「前漢の景帝の第9子、中山靖王劉勝の庶子の劉貞の末裔」という「漢王朝の血を引く高潔な人物」というのがあります。
でもこれ、冷静に考えてみますと、第9子だし、庶子だし、漢王朝からけっこう遠い、ですよね。しかも前漢だし。
三国志の舞台は「後漢の末期」から始まっているわけですが、この「前漢」「後漢」っていうのはなんなんでしょう。
ちとおさらいしてみます。
「項羽と劉邦」という司馬遼太郎さんの小説もありますが、始皇帝の秦が滅んで、乱世となった中国を、宿敵の項羽を破って勝利した劉邦が起こした王朝が「前漢」です。
劉邦さんはならずものの親玉って言われたりしている人です。
長安を都とした前漢は紀元前206年に始まったとされています。
もちろん、最初から前漢と名乗っていたわけじゃなくって、王朝の名前としては「漢」
前漢というのは後代になって、後漢と区別するために便宜上使っている名前なんですね。
前漢は8年までの198年間続いています。
で、後漢は洛陽を都として25年に建国されて、220年までの195年続いた王朝です。この220年ごろに活躍していたのが劉備、曹操、孫権の三国志の面々ってことになりますね。
で、漢の話ですが、前漢の終わりが8年で、後漢の始まりが25年ですから、その間に17年のブランクがあるってことになります。
この17年という短い期間、中国は血で血を洗う戦乱の世の中だったのかというと、さにあらず、「新」という名前の王朝があったんですね。
中国の歴史の中で2番目に短い王朝です。
ちなみに一番短い王朝は、あの始皇帝の秦で、15年という短命です。
日本語読みで「シン」っていう読みの王朝は、なんだか縁起悪い? ってそんなことはなくってですね「清」は267年続いて、中国歴代4番目の長さです。
さて17年しかもたなかった「新王朝」なんですが、その皇帝さんは「王莽(おうもう)」という人です。
日本ではあまり知られていない王莽さんですが、中国ではものすごく評判の悪い皇帝みたいです。
前漢の皇帝さんから次の皇帝に指定されたのはオレなんだもんね、っていう感じで「禅譲」を演出したみたいなんですが、世の中的には「簒奪」って評価されている人なんですね。
漢の前の秦の前の「周」の政策を良しとして、復古的に国を治めようとしたらしいんですが、なんだかうまくいかなくって、反乱が起きて、そんでお城に乗り込んで来た反乱軍の商人のおっさんに殺されちゃって、新は終わって、漢が復興したっていうことみたいですね。
歴史的にみれば漢王朝を途切れさせたってことになるわけで、後代からの人気も無し、っていう王莽さんです。
自分でこうって思ったら、そうしないではいられない。そういう頑固な人だったんでしょうかね。
復古的っていうのは、現状を変えようとしたアイディアの現われなんでしょうけれど、スタッフに恵まれなかったのか、根回しができないっていうか、求心力が無いっていうか、ねえ、スーさんみたいかもですね。
当時の前漢は経済状態が良くなかったからなんでしょうけれど、王莽さんがやろうとしたのって「計画経済」なんだろうと思います。
王莽さんって殺されちゃうほど人気のない皇帝だったっていう評価なわけですが、漢王朝が復活したっていう事情を考えれば、必要以上に悪者にされている部分もありそうです。
一度倒された側からすれば、コンニャロっていう気持ちがあるのは当然でしょうからね。
王莽は漢の皇帝の座を嘘八百並べて奪い取った悪いやつだ。無能だ。
そういう評価なんですが、ん~、まともなこと言ってんじゃん、っていう部分もあるように思います。
「五均(ごきん)」「六管(ろっかん)」っていうのがあるんですよ、王莽さんの政策なんですがね。
「五均」っていうのは、
1、食糧、物品の価格は皇帝が定めるものとすること。
需要と供給のバランスを考えて、物価の安定を図ろうとする政策。物が余れば皇帝が買って、不足すれば定価で放出するっていう制度ですね。
2、全ての仕事から皇帝は税金を徴収するものとすること。
国庫の負担を国民全員で行うってことで、ま、今の時代の税金制度に似ているかもです。
3、塩、酒、鉄、通貨は皇帝が独占権を持つものとすること。
これは六管にもつながりますが、豪族の力を制限しようとする政策なんでしょうね。
4、中国の天然資源は全て皇帝が所有するものとすること。
これも六管につながっていることです。3と同じで、地方の勢力を増大させないための工夫なんでしょう。
5、お金が必要であれば、皇帝が無利子で貸し付けるものとすること。
皇帝ローン、みたいなものですね。独占するけれども、必要な時には必要なだけ用立てますよってことですよね。
要は国をあげて、上意下達を徹底しようとする考え方なんでしょう。
「六管」っていうのは、3、4、の内容になりますが、国の「塩」「酒」「鉄」「銭」「名山」「大沢」は全て皇帝が管理するっていうことなんですね。
名山、大沢の二つが、どこまでのことを想定しているのか分かりませんが、産物の管理ってことだろうと思います。
で、これを発表した時の王莽さんの言葉が、これです。
「夫鹽食肴之將」
「酒百薬之長 嘉會之好」
「鐵田農之本」
「名山大澤 饒衍之臧」
はい、ここで出てまいりました。
「酒百薬之長」っていうのが「酒は百薬の長」ですね。
酒呑みの言い訳として、どこかの酔っ払いがほざいた言葉じゃなくって、政策として言われた言葉だったんですねえ。なんだか意外です。
「塩は食べものの中で最も大切なもの」
「酒は百薬の長であって、祝いの席にも欠かすことができない」
「鉄は濃厚作業の根本を成すもの」
「山や大きな河川、湖沼は豊かな蔵なのである」
ま、酒は百薬の長って概念自体を王莽さんが考え出したわけじゃなくって、もっと昔から言われていたことなのかもしれませんね。
この王莽さんの言葉の中で、必需品じゃないなっていうのは「酒」だけ、のような感じがします。
百薬の長かどうかは、判別できませんが、逆に考えれば必需品じゃないけれども、生活になくてはならないもの。どうしようもなく人間の隣りにあるべきもの。それが「酒」だという判断なのかもしれません。
百薬の長なんて嘘っぱち。ただの戯言に過ぎないっていう意見がありますが、要は付き合い方なんでしょうね。
酒は、人間に対して明らかな力を持っています。
その力が明らかなだけに、付き合い方を間違えれば、害にもなる。そういうことなんじゃないでしょうか。
クスリとの付き合い方も一緒ですもんね。酒って、たくさんあるクスリの中の王様なんですから。
はい、酒は百薬の長。上手に付き合いたいです。
でもね、バカ呑みしたいときは、バカ呑みしてイイんじゃないでしょうか。周りに迷惑かけずにね。
巧く自分をコントロールする、そのリトマス紙的な役割として、自分と相性のイイ酒。
そんな酒が見つかれば、独り者でも、カップルで居ても、家族の中に居ても、正直な自分を開放してくれる「百薬の長」なんだろう思います。
自分で自分に癒しを、っていうウィズアリトルヘルプマイフレンド。それが、酒。
でしょかねえ。
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