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【酒呑童子】っていう義賊 【金太郎】っていう英雄

< 真説鬼退治 時は10世紀の末の末 とある国の義賊の物語 >

義賊ってのがおりまして、昔からね、どこの国にもその存在が知られておりますね。


その国の権力者にしてみれば、邪魔者、犯罪者ってことになるんですが、庶民からは慕われていて一定の勢力を持っているもんですから、危険視されて「成敗」の対象になるっていうのが義賊の運命なんであります。


歴史ってのはね、勝ち残った側が言い伝え書き残すわけですから、敗れた側はワルモノとして歴史に残っていくことになるんですよね。
でなければ全く存在していなかったことになっちゃいます。

 


10世紀も末になりまして、とある国の大枝山という山の洞窟に鬼の一味がおりました。


ってことで話が始まっていくわけなんですがね、鬼なんだから洞窟に住んでますよっていうのは、なんといいますかね、今でもそうですけれど、千年も前からのステレオタイプ


どんなに大きな洞窟だってそんなに大人数が暮らせるはずもないですし、退治しなきゃいけないような勢力までにならないでしょ。
令和に生きる我々はこういう固定観念から抜け出さないといけませんですよ。はい。


お話としては鬼退治、討伐、成敗って言われます。


退治する側に被害があるからそういう表現になるんですよね。退治する側、勝った側がエライから。


そのエライ側に退治しなきゃいけない事情が生じる、どんな被害があったんでしょう。


ここからは日本で知られている実名をお借りいたしまして、話を進めてまいります。


10世紀の終わりごろ、大枝山酒呑童子(しゅてんどうじ)と呼ばれる立派な棟梁が住んでおりました。
大枝山っていうのは山岳の山じゃなくって、町の名前です。ましてや住んでいるところは洞窟なんかじゃなくって、ちゃんとした大きな屋敷です。


酒呑童子とその仲間は、農産物の生産に励んで、革命的な成果を上げていました。食糧事情が良好とはいえない国の中で、大枝山だけは食べものに困ることがなかったのです。


それは酒呑童子の研究努力がもたらしたもので、大枝山の人々は大変ありがたがって、自分たちの守り神、それゆえに自分たちで守らなければならない存在として「童子」と呼びならわしていました。


酒呑童子のもたらした成果として特徴的だったのが食糧のほかに「旨い酒」の醸造に成功したことです。


大枝山の人たちにとって「酒の神」でもあった酒呑童子自身、大の酒好きでもあったので、守らなければいけない存在としての「童子」に、酒呑みの「酒呑」がくっついて「酒呑童子」という名前で呼ばれていたんですね。


大枝山の酒は町の人々が百薬の長として呑むばかりでなく、他の土地の人々にも人気が出て、大変な売れ行きでした。


食糧事情の整った大枝山に金銭も集まって来ますね。


大きく発展した大枝山は、ますます開拓を進めます。農産物の生産もアップして、豊かな町になっていきました。


酒呑童子も屋敷をさらに大きくして、茨木という町からお嫁さんを迎えることになりました。


酒呑童子のお嫁さんは、良い清水の場所と、酒に適した麹をもたらして、大枝山のいっそうの発展に尽くして、町の人々から「茨木童子(いばらきどうじ)」と呼ばれて酒呑童子と同じように慕われました。


さらに茨木童子は機織りに優れていたので美しい着物も大枝山の名物となりました。
大枝山の豊かさはあっというまに評判になります。
そうなりますと周りの土地から移り住んでくる人が多くなって、大枝山の町はますます栄えていくことになりました。

 


こうした大枝山の発展は都(みやこ)にも聞こえて来ることになります。


都の王様は、税として大枝山の酒と農作物を納めるように言いましたが、酒呑童子は、この酒も農作物も、王のおかげで出来たものじゃなくって、自分ばかりじゃなく妻の茨木童子、そして大枝山の町の人々が自分たちで土地を開拓して、工夫して、努力して作り上げたものなので、なんの世話にもなっていない王に朝貢するいわれはない、といって拒否しました。


意識としては独立国ですね。
王のご機嫌伺いより、大枝山の住民の幸せが大事。住民たちにとっての義賊です。


大枝山の収穫祭の賑わいは、周りの町の憧れになっていました。


大枝山に行って暮らせば、腹いっぱい食べられるし、うまい酒も呑めるぞ。それにキレイな着物も着られる。
そういう噂は都の人たちにも伝わっていって、都から移住する若い男女も大勢出てきました。


このことが、酒呑童子が都の姫君を誘拐するという話として、後々、残っていくことになるんですね。


悪政の土地から善政の地域へ、人は流れていきます。避難じゃなくって移住です。

 


さて、都の王としましては面白くありません。
再三に渡る納税要請には従いませんし、酒も朝貢しません。
おまけに都からどんどん人が減っていってしまって、寂れる一方になってきました。


こりゃいかんね。


このままだと酒呑童子の方に人々の支持が集まって、自分より目立っちゃう。許せませんね。
国を奪われてしまいます。
ってことで、都の武勇優れた源頼光藤原保昌に征伐を命じました。


これこれ、鬼を退治してまいれ!


なんといっても王は王ですからね、都では絶対的な権力を持っていますし、人の使い方もこすからく巧いんです。


新進気鋭、37歳になる藤原保昌を最初に呼んで相談します。その相談の最中に押しも押されもせぬ都の大将、47歳になる働き盛りの源頼光を呼んで、話を進めます。
2人のライバル関係を利用して、征伐を速やかに行わせようっていう考えですね。


王の狙い通り、2人とも征伐に積極的になって、お互いの武力を自慢し合います。
ですけれども、やっぱりここは数々の戦を乗り越えてきた源頼光に一日の有利がありますねえ。


源頼光には自慢の四天王と言われる強者が揃っていました。


剛勇無双の人、武蔵国足立郡生まれの「渡辺綱(わたなべつな)」


荒くれ侍、相模国碓氷峠生まれの「碓井貞光(うすいさだみつ)」


数々の鬼退治に活躍した人、山城国松尾生まれの「卜部季武(うらべすえたけ)」


そしてご存じ、相模国足柄山生まれの「坂田金時(さかたきんとき)」金太郎ですね。


四天王のうち3人が坂東武者ですが、四天王はそれぞれ優秀な武将として多くの兵を従えていました。


年若い藤原保昌などに鬼征伐の手柄を立てさせたくない源頼光は早速征伐に向かいますが、酒呑童子側も都から征伐軍が向けられた情報を得ています。
豊かな町には人もたくさん居ますし、武器も豊富に揃えてあって四天王側も苦戦は免れません。


大将の源頼光は作戦を考えます。


都の薬師(くすし)に作らせた特別の酒「神変奇特酒」を都の姫たちに大量に持たせて、大枝山酒呑童子屋敷へ行かせます。
その毒酒を酒呑童子たちに献上させ、都の王から離反した武将が下ってくるので、よろしく願いたいと挨拶させてから、酒盛りの中に村人に身をやつして頼光と四天王が屋敷に入り込むことに成功しました。


都の王には愛想が尽きたという話をして酒呑童子たちを安心させて、自分たちは大枝山の酒を口に含み、酒呑童子たちには「神変奇特酒」を盛んに進めました。


屋敷の周りには部下の兵たちが遠巻きにしています。


すっかり酔いが回ってきた酒呑童子は、身体がいうことを聞かないことに気付きます。
まさかのだまし討ち!


そう思った時にはもう遅く、合図によって表に飛び出した姫たちが、一気に都の兵たちを引き入れて、凄惨な討伐劇が繰り広げられて、酒呑童子をはじめとした大枝山の優秀な人たちは残らず、鬼と鬼の一味として滅ぼされてしまいました。

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「おのれ! なんと卑劣な、恥を知れ」
酒呑童子はこう言って果てたということです。


こういうだまし討ちっていうのは案外多く記されていますね。


熊襲討伐が有名ですね。この時ヤマトタケルノミコトは女装して熊襲の王に近づいたとされています。


こうして、住民の生活を第一に考えていた酒呑童子という人は、正式な名前も伝えられず、鬼として歴史に残っているわけですが、実際にどんな人物であったのか、今となっては何も手掛かりなんて残ってないんでしょうね。


かたや、だまし討ちの片棒を担いだ坂田金時は、人気者の英雄「金太郎」として名前を今日に至るまで伝えてきています。


まかり間違えば立場が入れ替わっていたかもしれない鬼の酒呑童子と英雄の金太郎です。


ま、金太郎個人に悪意があったようには思えませんが、「神変奇特酒」っていう酒が伝説として残っていることは、征伐といいながら、正々堂々としたものでは無かったことを、せめて伝えておきたかった一市民の声なのかもしれません。


ちなみに、誰でも知っている「きんぴらごぼう」ですが、きんぴらっていうのは金太郎の息子「坂田金平(さかたきんぴら)」からきているんだそうです。


ゴボウを食べて精をつけようということから、っていうことなんですが、なんでキンタロウゴボウとか、キントキゴボウじゃないんでしょうね。


キントキマメ、キントキニンジンっていうのはありますよね。
こっちは金太郎の肌が赤かったからっていうことみたいですから、息子のキンピラは肌黒かったってことなのかもです。知らんけど。


どんど晴れ。めでたし、めでたし。なのか?

 

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