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酒呑みの食いしん坊、メタボはイヤだけどガマンは嫌い。

【祐庵焼き】「違いの分かる男」「気付いちゃう女」そういう日本人って もう居ないの?

< 「幽庵焼き」「祐庵焼き」「柚庵焼き」「幽庵漬け」「祐庵漬け」「柚庵漬け」み~んな一緒? >

「ゆうあん」ってなんなん? ってことなんでありますが、「北村祐庵」っていう茶人の名前。
1648年に生まれて1719年に亡くなっていますから、江戸初期の人ですね。


もちろん記録に遺っている人ですから、知る人ぞ知るっていう、有名人なんでしょうけれど、聞いたことなかったです。食通として知られた人だそうです。


食通とかグルメとか、ふううんって感じでしか認識できませんが、それで歴史に名前を刻んでいる人がいるってことも事実ですね。


古代ローマ時代のレシピ本「アピシウス」の著者ではないかとされている「マルクス・ガビウス・アピシウス」
聞いたことあります? 1世紀ごろの人。


ホントに著者なのかどうかは、どうも怪しい、ってことらしいんですが、同じ1世紀ごろのローマの博物学者「ガイウス・プリニウス・セクンドゥス」いわゆる「大プリニウス」が著した「博物誌」の中に、いくつかアピシウスについての記述があります。

 


ちと外れますが、新潮社、ヤマザキマリとり・みきの「プリニウス


むっちゃ興味深いマンガなんですが、単行本は2021年7月時点で第11巻。進捗、おっせえよッ! でも、じっくり楽しませていただきますです。ヤマザキマリさん、虫、そんな力いっぱい細かく描写しなくたっていいですから、どんどん先に進めてくださいませ。んはは。


食通の話です。


博物誌によりますとアピシウスは、


「赤いボラは調理する前に自分の魚醤の中に漬けておく事だ。それが一番美味しく食べる方法だ」


と言っていたそうです。
イタリアのボラって赤いんでしょうかね? 魚醤っていうのも、そんなに昔からあるもんなんですね。


「フラミンゴの舌こそこの世で一番の風味だ」


とも言っていたそうですが、フラミンゴ。。。
しかも、舌ですか。グルメって、なかなかにグロイ感じです。


フランスの政治家「ブリア=サヴァラン」も有名ですよね。
「食聖」とまで評価するむきもあります。1755年から1826年の人で、


「どんなものを食べているか言ってみたまえ、君がどんな人間であるかを言いあててみせよう」


というセリフが知られていますね。「美味礼賛」の著者です。


「味覚の生理学」とも訳されるこの本の著者は、19世紀初頭から炭水化物制限を説いていたらしくて、


「小麦粉、穀物、砂糖が肥満の原因である」


と言っていたそうです。ふむむ、そですか、としか言いようがありませんです。200年前です。

 


少し身近な方へ目を向けてみますと、日本にも居ますね。そです「北大路魯山人魯山人センセです。
魯山人センセは1883年、明治16年から1959年、昭和34年の人です。


美食家として知られる魯山人センセですが、かなり複雑な家庭環境の人で、いまだに気難しさで名を轟かせている芸術家ですね。「美味しんぼ」の「海原雄山」そのままなんですが、陶芸や書道でも多くの作品を遺しています。


見た目に重点を置く芸術活動に活躍しながら、フランス料理がその見た目を重視することには批判的で、味として合わないソースに意味はないと、フランス当地で、日本から持参したワサビとしょう油で食べたという逸話もあります。


家の中でも、その気難しさは変らなかったそうで、風呂上りにビールがキンキンに冷えていないと、お手伝いさんを怒鳴りつけたそうで、それで辞めていったお手伝いさんがたくさん居たそうです。


お手伝いさんには気の毒な感じですが、自分の好みというものに、あくまでも正直だった魯山人センセは、信用できるガンコジジイってことでしょうかね。


作家の「池波正太郎」も、本人は嫌がっていたらしいですが、食通として知られています。
1923年、大正12年から1990年、平成2年の人ですね。食についてのエッセイもとても魅力的です。


まあ、みんなね、お金のある人たちですね。


そういう財布を持っていないと、料理のピンキリを経験することが出来ませんし、旨いの不味いのと言っても、説得力が出てきませんからね。


味はあくまで個人の嗜好だとは思いますが、違いの分かる男、としての説得力が違ってきます。


「違いの分かる男」「気付いちゃう女」が飄然と登場してくるコマーシャルが人気だった時期があります。
ネスカフェゴールドブレンドですね。1970年ごろから続いています。


「違いが分かる」という表現は、実に素晴らしいコピーですね。インスタントコーヒーでありながら、登場してくる男、女、の個人の説得力をブランドイメージに取り込むという、実に優秀なコマーシャル。


たかがインスタントコーヒー、されどインスタントコーヒー。


映画監督の「松山善三


歌舞伎役者の「中村吉右衛門


楽家の「岩城宏之


建築家の「清家清」


レーシングカーデザイナーの「由良拓也


俳優の「高倉健


銅版画家の「山本容子


写真家の「蜷川実花


等々。錚々たる顔ぶれです。


その専門分野での「違いの分かる」顔として、説得力がありますね。


ただ、このゴールドブレンドのコマーシャルには「食」に関連する男女は登場してきていなかったと思います。
ま、コーヒーのコマーシャルですからね、食に関わる人は選択しにくかったのかもしれません。


で、北村祐庵です。


この江戸初期の食通は、水の味の違いを飲み分けたと言われています。


茶を淹れるに際して、どこそこの水を、と指定するらしいんですが、ある弟子が、指定された場所が遠かったので近場で汲んで差し出した。すると、祐庵はたちまち違う水であることを飲み分けて、一同が恐れ入ったという逸話が残っているそうです。


その北村祐庵が考え出したとされるのが「祐庵焼き」です。「祐庵漬け」とも言います。


祐庵という字面も「幽庵」「柚庵」など、いくつかあるようです。


祐庵焼きは今でも食べられている焼き魚料理ですね。


北村祐庵が考え出した江戸初期時点での「祐庵焼き」と令和の「祐庵焼き」が同じであることは考えにくいですが、今現在の祐庵焼きは、


酒、しょう油、味りんを合わせたタレに、ゆずやスダチなどの柑橘類を輪切りにして加えて「祐庵地」という下地を作ります。


祐庵地に好みの魚の切り身を漬けてから焼く。


これが祐庵焼き。


祐庵地に漬けておくことから「祐庵漬け」ともいうわけです。


北村祐庵は今の滋賀県の人だそうですが、祐庵焼きは琵琶湖の淡水魚よりも、海の魚が人気ですね。


アマダイ、マナガツオ、イナダなんかを祐庵焼きにすることが多いみたいです。
京都での人気はマナガツオ。


関東近辺ではあんまり聞かない魚ですね、マナガツオって。

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ただ、「西海に鮭なく、東海に真魚鰹なし」という言葉があるほど、関西ではスタンダードらしいです。


「【ぐじの酒蒸し】 若狭から京へ棒手振りが走る おばんざいの「ばん」を考える」「【十三詣り】 虚空蔵菩薩の知恵を授かる十三智菓という【和菓子】のチカラ」で紹介させていただきました「おばんざい 京の台所歳時記(河出文庫)」に「ゆうあんづけ」という一辺がありまして、秋山十三子さんは、マナガツオを、こう表現しておられますね。


「ひらめを、もっとのんきにしたようなお魚ーーまながつお。ひしもちみたいな形で、頭がちっちゃく、ずんぐりとして、まんぼうの子分みたい。京都ではふつう、まなとよぶ」


ユーモラスな表現ですが、切り身で買ってくるのが当たり前の今では、三枚におろせない人も多いですからね。
ひらめがどんな顔をしているかとか、ひしもちみたいなかたちの魚とか、まんぼうの子分とか、すうっと伝わりにくいのかもしれません。


まながつおは夏と冬が旬とされていますが、秋山十三子さんは本の中で冬の料理として扱っていますね。


さらに秋山さんのいうには、祐庵焼きはイカ、ブタも合うとのことで、このご意見には、やってみたことはなくたって、もう大賛成。疑いもなく合いそうです。


祐庵焼きのレシピをぐるぐる見て廻って気付いた「コツ」


祐庵地に切り身を漬けておく時間調節が難しいので、濃い味付けの祐庵地に水を入れて漬かり具合の良い割合を見つけること。
確かにね、マグロのヅケだって一緒ですよね。何度かやってみて、自分の好みを味を見つける。


西京焼きだってそうです。

 


でもね、祐庵地に入れる水。水の違いを飲み分けちゃう北村祐庵の考え出したっていう料理ですからね。


加える水にこだわってみたいところですが、水の味。分らんなあ。。。


違いの分かる男、じゃないなあ。


京都辺りには居るんでしょか。気付いちゃう女とかも。


でもねえ、そうやって背筋ピンと伸ばして、いつも難しい顔して、違いが分かるってより、のんきな「まながつお」的なポジションも、イイかもですねえ。