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ーー 居酒屋トークの ネタブログ ーー

【紅い白身さかな】鮭はいつからシャケになって なんで急にサーモンになったんでしょか

<ルイベっていうのは アニサキス対策をしたアイヌ文化のずいぶん昔からある食べ方なんですね>

食文化といいますか、ごく一般的に生活をしていて、たいていの日本人は普通にものを食べて暮らしているわけですが、気が付いてみると、いつのまにか消えてしまった食べもの、逆に、いつの頃からか食べ方の変わってしまった食べものっていうのがありますね。


嗜好品としてのお菓子や、デザートなんかでは流行り廃りというのがあって、変化してしまうというより、製造する側が流行までをも作り出そうとしている感があります。品目を変化させたい欲求があるっていうことですよね。商売です。


今はそういうのを含めて食文化というのかもしれません。

 


素材の組み合わせを工夫して作り出す嗜好品とは違って、天然自然のものでも、食べ方に変化の見られたものもいくつかあります。


知っているつもりになっていても、改めて驚かされる食べものというのもあります。
最近のものですと「台湾産のパイナップル」
芯まで食べられますよ、と言われて、すぐにピンとは来ませんでした。パイナップルの芯? という印象。


まあ、パイナップルを1個丸ごと買ってきて、家で剥いて食べるっていうことが普通だという人も少なくないのかもしれませんが、私はまったく想像すら出来ません。
自分で、自分の家でパイナップルを、あの硬そうな皮を剥いて切り分けるという経験をしていないからですね。


そういうことをしたいという欲求もありませんし、ほぼ缶詰でしか食べたことがありません。
料理の中に入っているものですと、一時期の町中華で酢豚にパイナップルが入っていました。
なんで中華の中にパイナップルなんだ、ということが話題になって、必要、不必要論争みたいなことも起こりました。


ま、この場合は必要不必要というより、甘酢でからめられたパイナップルが好きか嫌いかという論争に終始するのが普通だったと思います。
甘酢のパイナップルは嫌い、というのが多数派だったからなのか、経費削減のためなのか、令和の町中華で酢豚にパイナップルが入っている店って、なくなったんじゃないでしょうか。話も聞きません。
個人的にはすごく残念です。


で、台湾産のパイナップルの芯ですが、そこが特に旨いという種類のものではないらしく、無駄にせずに食べられますということなんだそうですね。それに切るときに取り除く手間が要らない。


台湾産のパイナップルは新種とか、品種改良の産物として日本市場に登場というわけではなく、これまでほぼ100%を中国に輸出していたものが、中国側の輸入制限を受けて、他の国へ輸出する必要があったので、今回、日本に入って来たという経緯らしいです。


台湾バナナっていうのは誰でも知っているでしょうし、食べたことがあると思いますが、台湾パイナップルって知っている人、日本に居たんでしょうか。台湾旅行とか行っている人たちは知っていた、んですかね。
でも、一気に人気が出たみたいです。日本と台湾の友好関係に寄与するという一面もニュースになったりしていますね。交流としては好い方向の出来事だろうと思います。


台湾産パイナップルファンの中国人は残念がっているでしょうけれど。


ま、個人的には、芯まで食べられますよっていうのを聞いて初めて、パイナップルの芯というものを意識して、そういえば輪切りのまん中に丸い穴が空いているなあ、という程度の認識だったのでした。


普通に身の回りにあって、充分知っているようで、実はよく分かってない食べものっていうのがあるわけです。分からなくたって困らない。というか取り立てて意識しない食べもの。


今回はサーモンの話なんですが、極身近な魚ですよね。好き嫌いはあるでしょうけれども、食べたことのない日本人って珍しいでしょうね。
でもサーモンって、昔、無かったんです。いや、ホントに。


んなバカな。昔からあったよ、だって弁当に入ってるおかずの代表じゃん。
というゴイケン、御尤もでございます。


昭和の時代のお弁当。日の丸弁当なんていうものがありました。これはおかずと言ってイイのかどうか、白ごはんの真ん中に梅干しがどーんと配してある。ザッツ・イット、という強者も居ないではありませんでしたが、たいていは弁当箱の一隅に「おかず」を入れてありました。


そういう取り外し型仕切りの付いたアルマイト製の弁当箱。
定番は「たまご焼き」と「焼き鮭」どっちか一つです。両方入っていたりなんかすると、ザ・ゴージャス!


男子も女子も、だいたいそんなようなお弁当でした。ごはんの真ん中のデッカイ梅干し。あるいは、ごはん全面海苔、とかそんなお弁当。


で、「鮭」の話なんですが、これ、なんて読みます?


「サケ」ですよね、普通に考えれば。でも今の中年世代より若い人たちは「シャケ」って読む人の方が多いかもしれません。でしょ? 間違いってわけじゃないですよね「シャケ」


なんでそうなったか。それはですね、はい、想像の話でありますが、「シャケ」と発音する機会の方が多いからだと思われますね。


昔、流行ったアイヌの木彫り。2足歩行のクマが笹竹に4、5匹突き通して肩に担いでいる置物だったり、口に大きなのを咥えて斜めに振り返っている木彫りのクマが、どこの家の玄関にも飾ってありました。あれはどういう流行りだったんでしょうかね。
ま、それはイイとして、あのクマが担いでいるサカナ。あれは「サケ」と発音していました。


「鮭」なんですから「サケ」です。たぶんこれが正解の読み方なんだろうと思います。
ところが、弁当に入っている「焼き鮭」になると「ヤキジャケ」と発音します。「シャケ」ですね。


お歳暮、正月の贈り物としてこれもまた昭和の定番だったものに「新巻き鮭」というのがありました。塩漬けした鮭が贈答用の箱に入ったりして、年末年始の家々を往ったり来たりしていたものでしたね。アメ横の名物品でもありました。
この「新巻き鮭」も発音は「アラマキシャケ」「アラマキジャケ」で「シャケ」なんですね。


「銀鮭」なんかも「ギンジャケ」です。「ギンザケ」と発音する人もいますね。


いずれにしても「サケ」とは発音しないです。


これって日本語の発音の特徴で、前になにかしらの言葉がくっ付くと、その後に続く言葉の発音が変わるっていうパターンだと思うんですよね。


で、高度成長期以来、日本の小学生の描く絵として「切り身で泳いでいる魚」が紹介されて話題になりましたね。
かつての雪印の社員が、牛乳が牛の乳であることを理解していなかったというニュースが駆け巡ったのも同じころだったと思います。


そんな事情を、他人事として笑ってばかりも居られない、というのが現実ですね。パイナップルの芯をしらないわけですからね。

 


知識として「鮭」というのは単独で「サケ」として存在していることを知らなくて、食べものとして呼ばれる「シャケ」の方が身近でリアルなものになったということなんだろうと思いますね。


ところで、この「鮭」にはもう一段回、わりと最近、呼び名の変化がありましたよね。

 

こっちの変化は、実は呼び方の変化だけではなくって、モノが違うって話なんです。
それは「サーモン」


え? それってただ英語読みしただけなんじゃん?


そりゃそうなんですが、じゃあ、なんだって急に鮭を英語読みにしたんでしょか。


それはですね、「サーモン」って呼ばれている「鮭」は日本人じゃなくって、ノルウェー人なんです。
って、ヒトじゃねえし!


それと、ノルウェー語で「鮭」は「laks(ラクス)」なので「サーモン」じゃないです。


だけれども、今や日本では「サーモン」が普通になりましたね。店の刺身でも、スーパーの切り身パックでも。


1990年代から日本で一般的になった「サーモン」って呼び名の魚はノルウェーの養殖魚なんだそうです。


ノルウェーラクスの養殖が始まったのは1970年代のことだそうで、そんなに昔からってわけでもないんですね。で、日本に縁のあったノルウェー人のビョーン・エイリク・オルセンさんが日本人は生で魚を食べるんだから、ノルウェーの養殖ラクスも人気が出るんじゃないか、ってことで販売に力を入れ出したのが1980年代。


ここでちょっと日本人の鮭食について振り返ってみますと、さっき言ったお弁当のおかずは「焼き鮭」でしたね。
定食屋さんのメニューでも鮭は焼き魚でした。って今でも焼き鮭は定番ですけれどね。


居酒屋さんの御造りに、3種盛りでも5種盛りでも、鮭は入っていませんでした。


そうなんですね、ずっと日本では生で食べることは無かったんです、鮭は。


なぜならば食中毒の可能性があったから。そです、有名な「アニサキス」です。


昔から知られていたんですね、鮭のアニサキスって。アニサキスって名前で呼ばれていたかどうかまでは分かりませんが、生で食べちゃダメ、っていう食の常識。


なのでオルセンさんのラクスも、最初は見向きもされなかった。鮭は生で食べません。


ただ、オルセンさんには根拠のある見通しがあったんですね。


天然の鮭はオキアミをエサにしているんだそうですが、そのオキアミに寄生しているのがアニサキスの卵や幼虫。
オキアミを食べる天然の鮭は中間宿主としてアニサキスの成長に寄与します。鮭の中で育っているわけです。
アニサキスの最終宿主はクジラ、イルカなどの大型海生哺乳類だそうで、人間の身体の中では成長できず、数日で死亡するのが普通。


でも、その数日間で内臓に噛みついたりして悪さをするわけです。


それは大昔から知られていて、鮭は焼き魚としてしてしか食べないという習慣だったわけですね。

 


ただオルセンさんのいけるはず、という思惑にも理由があって、ノルウェーの養殖ラクスにはオキアミを食べさせていない。その他にも食中毒の原因になるようなものは何もない。
で、名前を英語の「サーモン」にして日本人に馴染みの刺身、寿司ネタとしてプレゼンしたんだそうです。


それに乗ったのが、当時ブームになりつつあった回転寿司チェーン。


柔らかく脂のノッた「サーモン」はあっという間に市民権を得たという流れなんですね。
つまり「サーモン」は「サーモン」という種類の魚なのであって「鮭」じゃないんだよ、っていう商法。


サーモンは生で食べます。寿司ネタ、刺身ですね。


日本で、というかアイヌの人たちが昔から食べていた天然鮭「ルイベ」というのは、生の鮭を雪で凍らせた保存食としての食べ方で、これはもう生活の知恵なんでしょうけれど、凍らせることによってアニサキスは死滅するということなんですね。

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提供:農林水産省


これもまたナマではない食べ方ですね。


自然の知恵というか、アイヌの人たちはちゃんと知っていたということです。


あの2足歩行のクマが担いでいた鮭は、ルイベになる前の天然鮭。クマはアニサキスに苦しむことはなかったんでしょうか。やっぱり痛がって泣いていたかもですね。


「ルイベ」は今でも北海道の郷土料理として人気の一品です。
農林水産省のページ「うちの郷土料理 北海道 ルイベ」にも紹介されています

 

今現在の定食屋さんで「サーモン」の刺身に、アニサキスの心配は全然ないわけです。


なんとなれば「サーモン」しか無いからです。「鮭」の刺身はメニューにありません。鮭は焼き魚。


総じて考えてみますと、日本人にとっての鮭は、「サケ」「シャケ」から「サーモン」になったということで、天然から養殖に移り変わったということが言えそうです。でもノルウェー人。ノルウェー人、ありがたいです。


今見るメニューとしては、生の「サーモン」、冷凍の「ルイベ」、焼き魚の「ギンジャケ」


旨い嬉しいバリエーションがちゃんと残っていて、紅い白身魚の鮭は健在といえそうですね。

 

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