< ハピネスは瞬間的な幸せ ウェルビーイングは持続的な幸せ だそうですけど >
SDGs。17ある目標の3番目は「すべての人に健康と福祉を」です。
2015年に国連で提唱された「Good Health and Well-Being」を日本語に訳したものなんでしょうけれど、このまま直訳的にあてはめてみますと「Good Health」は「健康」、「Well-Being」は「福祉」っていうことになりますね。
これまで「福祉」に対応する英語は「welfare」って考えるのが普通だったんじゃないでしょうか。
社会弱者に手を差し伸べる保護活動的な福利厚生、医療福祉っていうニュアンスでいう福祉が、ウェルフェア。
だったと思うんですが、国連がSDGsの宣言に使用した単語はウェルフェアじゃなくって、ウェルビーイング。
なんでウェルビーイングって言葉を選んだんでしょうか。
あんまり耳馴染みのない言葉ですよね、ウェルビーイング。
そもそも、ウェルビーイングってなんなんでしょう。
ウェルビーイングっていう言葉が最初に使われたのは、1946年に「WHO(世界保健機関)」が設立された時の憲章なんだそうです。
そのまま直訳すれば「善い存在」とかになりそうな「Well-Being」
善いっていうのは、道徳的な意味での良さ。
WHOはそういう意味でウェルビーイングを使ったんでしょうか。
WHOの憲章は、こう定義づけています。
「健康(ウェルビーイング)とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」
すべてが満たされた存在、肉体的にも、精神的にも、そして所属している社会的にも満たされている個人。
なんだかアリストテレスが唱えていた「最高善」のような概念にも思えてきます。
でもWHOの憲章では、ウェルビーイングは健康って訳されていますね。
それにしても半世紀以上前に宣言されていた言葉だっていうのは不勉強にして知りませんでしたが、WHOの憲章以来ずっと使われてきた言葉ではない、と思いますね。とくにウェルビーイングっていう言葉が単独でピックアップされたことって無かったんじゃないでしょうか。
それがなんで今、ウェルビーイングが単独で叫ばれるようになってきているんでしょうか。
SDGsの3番目の目標として用いられた言葉だからでしょうか。
国連でウェルビーイングっていう言葉が使われた2015年っていうのは今から7年前です。
まあ、国連の活動に携わっている人たちや、WHOで仕事をしているような人たちにとってずっと当たり前に通用してきた言葉なのかもしれませんが、一般的だったとは言い難いように思いますね。
せいぜい、ここ3年ぐらいじゃないでしょうか。ウェルビーイングっていう言葉を見聞きするようになったのは。
とすると、コロナパンデミックがトリガーになってるんでしょうかね。
たしかに、パンデミックが発生してしまうと、ある種のコミュニティ内の感染率の高さが浮き彫りになって、そこに対処しなければ感染拡大は止められない。自分が所属しているコミュニティだけが安全であれば大丈夫っていうものじゃないことを、我々はしっかりと学習したはずです。
生命の大事さは利己的な生活態度では守れないってことですよね。
ウェルビーイングの声が大きくなってきたのには他にも要因がありそうです。
経済産業省の「政策について ESG投資」を見ますと、世界的な傾向として投資の考慮対象が従来の財務情報ばかりじゃなくって、「E Environment 環境」「S Social 社会」「G Governance 管理」に、より重点を置くようになってきているようです。
ま、個人的には投資とか全くの無縁ですが、世の中的に投資のトレンドが経済第一主義から移行しつつあるってことなんでしょうね。
地球温暖化が言われ始めてからずいぶんになりますけど、当初は「E Environment 環境」がメインになっていたかもって感じの「ESG投資」ですが、コロナパンデミックによって一気に「S Social 社会」の重要性が高まって来たのかもです。
まず、生活圏としての社会が健康でなければウェルビーイングは実現されない。
さらには2021年の「ダボス会議(世界経済フォーラム)」のテーマは「グレート・リセット」だったっていうのもウェルビーイングに関連しているかもしれません。
「世界の社会経済システムを考え直さねばならない。第2次世界大戦後から続くシステムは環境破壊を引き起こし、持続性に乏しく、もはや時代遅れだ。人々の幸福を中心とした経済に考え直すべきだ」
っていう提言がなされているんですね。
ダボス会議なんて拝金主義者の集まりかと勝手に思っていましたんで、この提言には、何を今さら、とか思いつつも、正直驚かされました。
現状の経済活動はもはや時代遅れになっている、っていう宣言はかなりインパクトがありますよね。
「ウェルビーイングエコノミー」なんていう新しい経済活動も始まってるみたいですしね。
「OECD(経済協力開発機構)」の「教育2030」でも、重要なのは食料などの物質的資源への平等なアクセスを可能にするだけじゃなくって、教育、安全な社会環境っていう経済以外への公平なアクセスを実現することだっていう、まさにウェルビーイングを標榜するような提言をしています。
日本の厚生労働省は「平成30年度雇用政策研究会報告書」で、
「就業面からのウェル・ビーイングの向上とは、働き方を労働者が主体的に選択できる環境整備の推進・雇用条件の改善等を通じて、労働者が自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を送れるようになることにより、自らの権利や自己実現が保障され、働きがいを持ち、身体的、精神的、社会的に良好な状態になること」
としています。
まあね、相変わらず解り難くて固い表現ですが、働き方改革の必要性っていう掛け声が聞こえては来ます。
ただ、実際にいくつかのプロジェクトを経験して見てきた働き方改革は、コロナパンデミックのタイミングもあったのかもですけど、働き方改革、イコール、リモートワークだったりしていますね。
掛け声は理想的である方がイイようにも思いますけれど、今の現状では、働き方改革が実現できたとしても、ある閉じたコミュニティのみのウェルビーイングに終始しそうな感じがします。
経済産業省、厚生労働省っていう各省庁としてのウェルビーイングへの取り組みは充分に評価されるべきなんだとは思うんですが、省庁を横断するような具体策を取りまとめないと、ホントの意味での働き方改革実効性は期待できないものになるんじゃないでしょうか。
こうして考えてみますと、めっちゃ難しいものなのかもですね、ウェルビーイングって。
政府、オカミに頼りっぱなしじゃダメなんでしょうね。
んなこたあ、とっくの昔から判ってるじゃんか、っていうような「変えたい」気持ちを形にする、 世界最大のオンライン署名プラットフォーム、「Change.org」っていうのがありますね。
2022年秋の、旧統一教会問題対応についてのニュースを追ってみますと、世論の生成っていうのは時の政府を動かす力が、少なくとも日本にはまだあるように思えます。
世論にはチカラがあるように感じます。
「Change.org」の活動内容について詳しくは知りませんが、インターネット社会のグローバリズムを考えますと、確実に1つの国境を越えたコミュニティになり得るウェルビーイング活動になっているのかもしれません。
キャンペーンっていう形でいろいろやっている感じの「Change.org」
10月時点では文部科学大臣宛ての「統一教会解散署名」っていうのをやっていますね。
そういう活動っていうのもアリだとは思いますけど、結局あれですよね。個人こじんの意識がウェルビーイングにならないとウマクいかないってことなのかもですね。
持続的な幸せ、ウェルビーイング。
難しいことなんでしょうけれど、重要なことでしょうね。
wakuwaku-nikopaku.hatenablog.com
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