< 近所の町中華 安い店で850円 多いのは950円 980円ぐらいですけど ちょっと高いなあ >
昔、夏になると冷やし中華一択だった時期があって、けっこう好きだったんですけど、そういえば最近食べていないなあって気付きました。
値段の高さっていうのもありますけど、このところ何でも高いですからねえ。
高級品とは思いませんけれども、冷やし中華って昔からラーメンよりは高かったですね。
作るときは乗っけるだけの具材ですが、あれらを準備しておくのって、かなり手間でしょうし、大量に用意したはいいけど、注文が入らなければすぐにダメになっちゃう食材が多いですもんね。
ロスも考えるとどうしても高い値段設定になっちゃうのかなあ、とか、そう受け止めていました。
1930年、あるいは1937年ともいわれますが、仙台市青葉区「龍亭」が始めたっていう説と、1933年、あるいは戦後、1945年以降に、東京の神田神保町「揚子江菜館」が作ったっていう説の2つがある冷やし中華の発祥です。
ま、このほかの地域にも、いや、ウチの方が早くから冷やし中華やってたよ、っていう店もあるのかもですけどね。
要は、夏場に町中華の売り上げが落ちることに端を発していて、ラーメンを冷たくしようっていうアイディアなんでしょうから、具材に何を使うか、タレは何にするかっていう違いがあっても、その土地ごとに同じ時期ぐらいに誕生していてもおかしくはない気がします。
で、日本全国に広まって、昭和の時代はどこの土地でも冷やし中華って人気があったんだろうって思いますねえ。
夏場の冷たい食べものって、なかったですし、今でもそんなにありませんもんね。
ジャージャー麵、冷麺、ぐらいが増えた程度でしょうか。
水道水でしめた麺を、冷やしたラーメンスープに入れて、具材はいつものラーメンと一緒っていう「冷やしラーメン」っていうのをやっている町中華もありますけどね。
最初の頃の冷やし中華のタレって、酢醤油のみでした。
ゴマダレが出てきたのっていつ頃だったでしょう。今は2つともが定番になっていますね。どこの町中華でもやってます。
地球温暖化って言われ始めたウン十年前。
梅雨時になるともうかなり暑い日が続くようになって、町中華の中では常連さんが「冷やし中華、まだ始めないの?」っていう声をあげるようになりました。
「暑いんだからさ、始めちゃえば、みんな食べるよ。冷やし中華」
人気の高かった冷やし中華は、通年やってもイイんじゃないかっていう声もあがりましたよね。
店の中は温かいとしても、寒い冬に冷やし中華を注文する人はそんなにいないだろうっていうことで、結局は浸透しませんでしたけれど、何店舗か通年で冷やし中華をメニューに載せていた町中華もありました。
1975年には「全日本冷し中華愛好会」っていう団体が、ジャズピアニストの山下洋輔、作家の筒井康隆、タレントのタモリが中心となって結成されているんだそうです。
山下洋輔が夏以外でも冷やし中華を食べたかったっていうのが結成の理由。
中心となった人たちが人たちですから、けっこう賛同する芸能人、有名人もいたみたいですね。
1977年、1978年には「冷やし中華祭り」っていうイベントを開催したっていうことで、冷やし中華で盛り上がっていたんですねえ。昭和50年代です。
町中華の店内で、冷やし中華がそういう盛り上がりを見せていたようには思えませんけれど、中華料理業界が「冷やし中華始めました」っていうポスターを展開したのはこの頃からなのかもですね。
ところで「冷やし中華の日」っていうのが設定されているって、知ってました?
毎年7月7日、七夕の日が冷やし中華の日。
1995年に冷やし中華愛好家たちの申請によって日本記念日協会に正式に登録されているんだそうです。
織姫と彦星って、デートに冷やし中華を食べることになったんでしょうかね。
この頃の町中華では、茹で上がった中華麺を水道水で冷まして、さらに氷水でしめていたものでした。
冷たい。だから、冷やし中華。
でも、いつごろからか、氷水でしめるっていう作業はやめちゃってますね。
もちろん、店によるんだろうとは思いますけど、今の冷やし中華は冷たくないんですよね。
キンキンに冷やしたタレをかけるんだから、冷たいでしょ、っていう意見もあるでしょうけれど、なんかね、忙しくなってくると水道水にさらす時間も短くなって、ぬるい麺の冷し中華っていう店もありますよ。
昔は夏の町中華で冷やし中華を注文する人ってけっこう多かったんですけど、最近、なんか少ない気がします。
今、エアコンのない町中華なんてないでしょうし、バカ暑い外から店に入った時点で充分に涼しさを感じられるんで、注文意識が冷やし中華に向かわないのか、それとも、冷やし中華自体が旨くなくなったんでしょうか。
どうもね、昔に比べて旨くなくなったような気がするんですよねえ。
タレの酢醤油が甘くなっているような気がしませんか。
化学調味料の甘さ。
何を旨いって感じるかは人それぞれ、嗜好の違いでしょ、っていうこともありますけれど、冷やし中華に限らず、今の外食って甘いのが多くなって来たように感じます。
行列の出来ているラーメン屋さん。人気の理由はスープの甘さだったりします。
でも、野菜系の甘さとか、そういうんじゃなくって砂糖、化学調味料の甘さ。
味としては、もちろん旨いと思います。思いますが、旨い、よりも、甘い、です。
なんだかなあです。並んでまで化学調味料の旨さを摂ろうとは思いませんねえ。
熱いラーメンより、冷やし中華の方が化学調味料の甘さが目立つのかもですね。
美味しんぼに「スープと麺」っていう回があって、「夏は、やっぱり冷たい物が美味しいでしょ」ってことで冷やし中華の話しなんでした。
東西新聞社家庭部で冷やし中華を取り上げることになって、いつものように山岡士郎、栗田ゆう子に協力依頼が来るんですよね。
で、これまたいつものごとく山岡はしぶるんですが、「冷やし中華なんて食えたもんじゃないってことを再確認するために、ついて行ってやるよ」ってことになります。
美味しんぼっていうマンガは食べものに対してシビアなことを言うのがウリですよね。
冷やし中華が人気で行列が出来ている町中華に行って、山岡はこう言います。
「まずスープが駄目だ、ろくにダシを取ってない。使っている酢は化学的に作った酢酸や氷酢酸を水にといて糖類などを添加して作った合成酢だから、香りがきつくて味がベシャベシャだ」
ん~。そうなんですよね。酢って餃子のタレを自分で作る時にも感じるんですけど、なんかニセモノの酢だなあって思います。町中華の酢ね。
「そしてこの化学調味料の使い方のすさまじさときたら舌が麻痺するぜ! おまけに砂糖を嫌というほどぶち込んでくれて、これじゃシロップだよ」
さすがにシロップとまでは感じたことないですけど、イヤな甘さであることは間違いないですね。
「麺がまた問題だ。質の悪い粉を使って腰を出すために、カン水の使い過ぎで、まあ重曹くさいこと、おまけに卵を使っているように見せるために黄色く着色しているぜ」
ま、町中華で自家製面しているなんてトコは少ないでしょうね。製麺所から気に入った麺を取り寄せているんでしょうけど、特に冷やし中華専用の麺を使っているっていう町中華は少ないでしょうね。
マンガでは冷やし中華目当てで行列が出来ている店に行っているんですからね、そんなことを言われたら、店の人間だけじゃなくって客たちも怒り出しますよね。
「我々が美味しいと思って食べている物に何をケチつけやがんだ!?」
山岡が怒鳴り返します。
「ガイドブックをうのみにしてありがたがるな! 旨いかまずいか自分の舌で判断したらどうなんだ!!」
ま、このあとは、いつもの通りで、海原雄山との冷やし中華対決になって、っていうお話です。
あのね、山岡さん。
自分の舌で判断しろっていうのは、至極真っ当なご意見ではありますがね、今ね、21世紀初頭の働き盛りの日本人って、化学調味料で育ってきているっていう事情もありましてね、素材の風味とかじゃなくって、化学の味がホンキで旨いと思っているのかもですよ。
ちゃんとした食べものって、少なくなっている日本です。
個人的には最近の冷やし中華、食べませんです。嫌な甘さだから。
昔は好きだったんですけどねえ、冷やし中華。
町中華で始まるときは「冷やし中華始めました」なんですけど、終わるときはすう~っと、無言で消えていきますよね。夏の終わり。いろいろと寂しいものなんですよねえ。
その人が旨いと思って食べているんだから、ってことで放っておいてイイことなんでしょうか。
分かりませんねえ。
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